中都の戦い

中都の戦い：モンゴル帝国と金朝の激突と、その後の華北支配

1214年から1215年にかけて、モンゴル帝国と金朝の間で中都（現在の北京）を巡る激しい戦いが繰り広げられました。この中都の戦いでは、モンゴル軍の戦略、金朝の政治的混乱、そして両国の思惑が複雑に絡み合い、華北の歴史に大きな転換点をもたらす結果となりました。

戦いの背景：モンゴル帝国の台頭と金朝の衰退

1206年、チンギス・カンがモンゴル帝国を建国すると、西夏やウイグルを征服し、勢力を拡大していきます。1211年、ついに金朝への侵攻を開始。モンゴル軍は金朝の重要な牧場を制圧し、兵站を断つことで金朝の軍事力を弱体化させました。野狐嶺の戦いでの金朝の敗北は、この侵攻における重要な転換期となりました。しかし、モンゴル軍も大きな損害を被り、戦況は膠着します。

1213年、モンゴル軍は休養を終え、大規模な南下を開始。居庸関を避けて紫荊関を攻略し、華北平原に進出しました。モンゴル軍の目的は金朝の征服ではなく、略奪と弱体化であり、華北各地を攻撃しながらも、本格的な軍事占領は行いませんでした。この作戦によって金朝朝廷は中都で孤立していきます。

包囲戦：策略と内紛

モンゴル軍は中都包囲を開始しますが、その過程には金朝側の内紛も大きく影響しました。金朝では、胡沙虎がクーデターを起こして実権を握りますが、モンゴル軍との戦いで敗北を喫します。その後、高琪が胡沙虎を排除して実権を握りますが、モンゴル軍は居庸関を陥落させ、中都は完全に包囲されます。

第一次包囲と和議

ジェベ率いるモンゴル軍は中都を包囲しますが、当初は城攻めを目的としておらず、連絡線を遮断して金朝朝廷を孤立させることを目指していました。金朝側は士気が低迷しており、積極的な抵抗は行いませんでした。チンギス・カンも当初は金朝を征服する意思はなく、略奪と弱体化を目的としていたと考えられています。1214年、モンゴル軍の圧倒的な軍事力に押された金朝は和議に応じ、岐国公主をモンゴル側に差し出すことで包囲を解かせました。

しかし、この和議は長く続きませんでした。金朝はモンゴル軍の脅威を感じ、中都から開封へ遷都することを決定します（貞祐の南遷）。この遷都はモンゴル側にとって和約違反とみなされました。さらに、金朝が契丹人傭兵の武具を奪おうとしたことから、契丹人傭兵が反乱を起こし、モンゴル側に救援を求めました。この契丹人の反乱と金朝の和約違反を理由に、チンギス・カンは中都への再侵攻を決意しました。

第二次包囲と中都陥落

モンゴル軍はサムカ・バアトルを主将、石抹明安を副将として、再度中都を包囲します。金朝は中都救援のため、各地から軍を派遣しますが、モンゴル軍に次々と敗北し、中都への補給は途絶えてしまいます。城内では、守将の承暉が自害し、城の防衛体制は崩壊します。1215年5月、中都は陥落しました。耶律楚材はこの時中都にいて、後にモンゴル帝国に仕えることになります。

中都陥落後の影響

中都の陥落は、モンゴル帝国の華北支配に大きな影響を与えました。中都は燕京と改称され、モンゴル帝国の重要な拠点となります。この地は後にクビライ・カアンによって大都（現在の北京）が建設され、現代に至るまで世界的な大都市として発展を続けます。中都の戦いは、モンゴル帝国の拡大と華北の歴史に大きな足跡を残した出来事でした。

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