中野寛次

中野寛次（なかの かんじ、1930年? - 2000年8月14日）は、日本の音響監督、そして吹替演出家としてその名を刻んだ人物です。彼は東北新社に所属し、日本音声製作者連盟の理事長も務め、業界の発展に尽力しました。

生い立ちとキャリア

東京都出身の中野は、旧制市立一中（現在の千代田区立九段中等教育学校）を卒業後、鎌倉アカデミアで学び、新劇の世界に足を踏み入れました。しかし、演劇だけでは生活が困難であったため、1957年に太平洋テレビジョンに入社し、プロデューサーとしてのキャリアをスタートさせました。その後、フリーランス期間を経て、東北新社に入社し、吹替演出家へと転身しました。彼は卓越した才能を発揮し、数々の作品で演出を手がけ、外画部長という重責も担いました。

1980年代に入ると、中野は難聴を患い、演出家としての活動は徐々に減少しましたが、それまで培ってきた経験を活かし、声優、翻訳家、そして演出家の育成に力を注ぎました。彼の指導を受けた多くの人々が、現在も業界の第一線で活躍しています。

2000年8月14日、中野は70歳で生涯を閉じました。彼が業界に残した功績は計り知れません。

人物像とエピソード

中野は、声優の池田昌子について「高校生のころから知っている」と語っており、互いに芝居をするなど親交があったことが知られています。また、若本規夫を声優業界に導いたのは中野の功績によるものです。彼は、才能ある人材を見抜き、育成することに情熱を注いでいました。

沢田敏子は、中野の演出について「とても読み込みの深い、高い完成度を求める方」と評しています。中野の作品に対する徹底したこだわりが窺えます。また、天野真実は、養成所時代に中野を「ひたすら追いかけた方で、人としても監督としても優れた、真の『先生』でした」と語っています。中野の人間的な魅力と指導者としての卓越した才能が、多くの人々に影響を与えたことを物語っています。

中野は亡くなる直前に、養成所の新人声優に対して「報われるとは限らぬ茨の道だが、選んだのなら頑張りなさい」という遺言を残しました。彼の言葉は、声優を目指す人々にとって、今もなお道しるべとなっています。

主な参加作品

中野寛次は、テレビアニメから映画、テレビドラマまで、幅広いジャンルの作品で音響監督、吹替演出家として活躍しました。以下に主な参加作品を記します。

テレビアニメ

1966年：『とびだせ!バッチリ』
1970年：『男どアホウ甲子園』
1978年：『新・エースをねらえ!』
1980年：『鉄腕アトム』
1981年：『どんべえ物語』

吹き替え

映画

『愛という名の疑惑』
『あなただけ今晩は』（TBS版）
『ア・フュー・グッドメン』
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦|インディ・ジョーンズ_最後の聖戦』（ソフト版）
『麗しのサブリナ』（ソフト版）
『華麗なる相続人』
『幸福の条件』（ソフト版）
『心の旅』（ソフト版）
『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』
『ジョーズ』（日本テレビ版）
『スリーメン&リトルレディ』（ソフト版）
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り|セント・オブ・ウーマン_夢の香り』
『ターミネーター2』（ソフト版1）
『大洋のかなたに』
『ティファニーで朝食を』（フジテレビ版）
『ドク・ホリデイ』
『ネイビー・シールズ』（ソフト版）
『ハード・ターゲット』（ソフト版）
『パララックス・ビュー』
『パリの大泥棒』
『ピラミッド』
『蛇皮の服を着た男』（テレビ版1）
『マイ・ガール』（ソフト版）
『マジェスティック』
『ミシシッピー・バーニング』（ソフト版）
『名犬ラッシー』
『旅情』（日本テレビ版2）
『愛と死の間で』
『生きてこそ』

テレビドラマ

『アンタッチャブル』
『大草原の小さな家』
『ホミサイド/殺人捜査課|ホミサイド_殺人捜査課』
『FBIアメリカ連邦警察』

出演

『ホパロング・キャシディ』
『カナカナ』（1995年） - 校長 ※声の出演
『火星のわが家』（2000年）

関連情報

関連項目: 東北新社
外部リンク: 中野寛次 - allcinema
中野寛次『声優論』第一部 - ウェイバックマシン
* 中野寛次『声優論』第二部 - ウェイバックマシン

中野寛次は、音響監督、吹替演出家としてだけでなく、後進の育成にも尽力し、日本の声優業界に多大な貢献を果たしました。彼の残した功績は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

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