中関村(チョンクアンツン)とは:中国のシリコンバレー
中関
村(
拼音: Zhōngguāncūn)は、
中華人民共和国北京市西北郊の
海淀区に位置する地区です。北京地下鉄4号線には同地区名を冠した駅があり、交通の便も良い場所です。
概要:IT産業と学術の中心地
かつては日本の
秋葉原のような電子製品街として知られていましたが、近年では中国最大のIT企業である
レノボをはじめ、多くのIT産業や研究所が集積し、深圳とともに「中国の
シリコンバレー」と呼ばれることが増えてきました。
北京大学、
清華大学、
中国人民大学、
北京理工大学など、中国有数の名門大学にも近接しており、学術的な雰囲気も漂っています。
2018年には、北朝鮮の
金正恩が訪問するなど、海外の要人に対する国家的な威信を示す視察先としても重要な位置づけとなっています。
地名の由来:宦官との関わり
中関
村一帯は、かつて永定河の河床であり、地元住民からは「中湾」と呼ばれていました。
明の時代になると、
宦官所有の
荘園や
墓地となり、
宦官の別称である「中官」が「中湾」と音が似ていたため、いつしか地名も「中官」と呼ばれるようになりました。清朝末期に、
地図作成の役人が
宦官のイメージを払拭するため、「中官」を同音の「中関」に書き換え、現在に至ります。「中関
村」という地名は、
中華人民共和国成立後、「中関」を中心に設立された行政
村の名前に由来します。
中関
村が「中国の
シリコンバレー」として発展するきっかけを作ったのは、「中関
村の父」と呼ばれる
中国科学院物理研究所の陳春先教授です。陳教授は、アメリカ東海岸の
ボストン近郊にあるハイテク産業地帯に感銘を受け、
1980年10月に中関
村初の民営科学技術組織である「北京プラズマ学会先進発展技術サービス部」を設立し、技術の実用化に乗り出しました。
当時、中国は
改革開放政策の初期段階にあり、中国科技院のような政府機関は国家の計画や資金に全面的に依存していました。しかし、先進技術サービス部は国家の資金援助に頼らず、市場の需要に応じて応用技術を開発し、独自に運営する私企業でした。私的経営が認められていなかった当時としては極めて大胆な行動であり、大きな議論を呼びました。
1983年、当時の国家指導者が中関
村の民営化実験を支持する声
明を発表したことで、ようやく論争は鎮まりました。その後、中国初のIT民営企業である四通もこの地区で創業されました。
1988年には北京新科学技術産業開発試験区が設立され、
2001年には従業員数が約35万人に達しました。同年、
北京市はサイエンスパーク条例を施行し、税制優遇や戸籍緩和策などで起業・投資の促進や優秀な人材の確保を図っています。
中国の起業熱と中関村
中国では、「大企業の従業員よりも小さな会社のオーナー」という気風があり、独立心旺盛な人が多いです。そこに政府の支援が加わり、中関
村地区には長さ200メートルほどの「創業大街」(創業通り)が誕生しました。この通りにはネットカフェが立ち並び、生まれたばかりの会社のオフィスとして利用されたり、起業家向けの手続きサービスや投資機関の出張所が設けられています。
中国全体のベンチャー投資も急増しており、中国の投資サービス会社「投中集団」によると、
2014年の中国におけるベンチャー投資件数は1360件、投資総額は127億ドル(約1兆5000億円)と過去最高を記録し、日本の10倍以上となっています。創業大街にある有力カフェ「3Wカフェ」では、
2015年5月に李克強首相がバニラ・
カプチーノを飲みながら、ネット金融会社を興した起業家と語り合う姿が大々的に報道されました。李首相の悩みは雇用の確保であり、
2015年には大学卒業生が過去最多の749万人に達したため、政府や国有企業だけでは十分な仕事を提供できなくなっていました。そこで
2014年秋には、「大衆による起業、万人によるイノベーション」をスローガンに掲げ、会社登記の手続きを簡素化するなどの措置を次々と打ち出しました。
中関村の課題
中国の起業ブームの主役は、「O2O」(オンライン・ツー・オフライン)と呼ばれる、ネット上のサービスと実生活を結びつけるようなアイデアです。これにより、料理の出張サービスなどが生まれています。しかし、技術主体の米国
シリコンバレーとの差はまだ大きいと見られています。
中関村地域の主なIT関連大学、研究所
大学
北京大学
清華大学
北京理工大学
中国人民大学
北京信息工程学院
北京计算机学院
連合大电子工程学院
研究機関
中国科学院电子学研究所
中国科学院计算技术研究所
中国科学院半导体研究所
中国科学院软件研究所
Mozilla China
民間研究所
IBM中国研究センター
マイクロソフト・リサーチ・アジア
Apple研究開発センター(北京)有限公司
インテル中国研究センター
モトローラ中国R&Dセンター
ノキア中国R&Dセンター
松下电器R&D(中国)有限公司
富士通R&D有限公司
* NTTデータ北京有限公司