丸善石油硬式野球部

愛媛県松山市を活動拠点としていた社会人野球チーム、丸善石油硬式野球部。石油製品の精製・販売を手がける丸善石油を運営母体とし、日本野球連盟に加盟していました。1955年の創部から1981年の解散まで、日本の社会人野球界において特に都市対抗野球における歴史的な偉業を成し遂げたチームとして記憶されています。

チームの設立と初期の活躍

丸善石油硬式野球部の始まりは、1955年4月に丸善石油の松山製油所に勤務する従業員たちの熱意ある有志が集まり、結成されたことに遡ります。チームは順調に力をつけ、創部からわずか2年後の1957年には、社会人野球の二大大会の一つである都市対抗野球大会に初めて出場を果たしました。同年には、もう一つの主要大会である産業対抗野球大会（後の社会人野球日本選手権大会）で堂々の優勝を飾り、その実力を全国に示しました。

輝かしい黄金期と都市対抗優勝

チームの歴史において特筆すべきは、1959年の都市対抗野球大会での活躍です。この年、丸善石油は勝ち進み、決勝戦で強豪の富士製鐵釜石と対戦。激戦を制して見事優勝を果たしました。この優勝は、四国地方に本拠地を置くチームとしては都市対抗野球大会史上初の快挙であり、そして2023年現在に至るまで、四国勢としては唯一の優勝という金字塔として社会人野球史に刻まれています。この栄光の翌年、1961年には産業対抗野球で準優勝となるなど、チームはまさに黄金期を迎えていました。

一度の休部と活動再開、そして終焉

しかし、順風満帆に見えたチーム活動は一時的な中断を余儀なくされます。1962年11月、母体である丸善石油の経営状況が悪化し、その立て直しを図るために、チームは公式戦への出場を辞退し、活動を休止することを発表しました。

約7年間の沈黙を経て、チームは再び活動を開始します。地元後援会などからの強い後押しを受け、1969年3月に活動を再開。復活したチームはすぐにその実力を証明し、翌1970年には産業対抗野球大会で早くも2度目の優勝を達成しました。1971年には都市対抗野球で再び決勝まで進み、準優勝という成績を残しています。さらに、1975年には新たな主要大会となった社会人野球日本選手権大会に初出場を果たすなど、再び全国レベルでの存在感を示しました。

しかし、母体企業の厳しい経営状況は改善されませんでした。1981年、日本選手権大会での敗退を最後に、丸善石油本社は野球部の活動終了を発表。約26年間にわたるチームの歴史は、この時静かに幕を下ろしました。

主要大会成績とOB選手

丸善石油硬式野球部は、その活動期間中に数々の大会で顕著な成績を残しています。都市対抗野球大会には合計12回出場し、優勝1回（1959年）と準優勝1回（1971年）という記録を残しました。社会人野球日本選手権大会には5回出場しています。また、日本産業対抗野球大会では2度の優勝（1957年、1970年）と1度の準優勝（1961年）を誇ります。この他にも、JABA四国大会で3回、JABA九州大会とJABA伊勢大会でそれぞれ1回の優勝経験があります。

多くの才能ある選手を輩出したことでも知られ、プロ野球界へ巣立ったOB選手も多数存在します。主な選手としては、矢形勝洋、種茂雅之、岩上江笠、西三雄、作道烝、高畠導宏、古賀正明、金田進、成田幸洋などが挙げられます。特に作道烝は休部、成田幸洋は廃部に伴い、他の社会人チームに移籍してからプロ入りを果たしています。また、元プロ野球選手の西五十六氏が投手としてチームに在籍した時期もありました。チームの指導者としては、選手としても在籍し、後に高校野球やプロ野球で指導者として活躍した岡田悦哉氏や、尾茂田叶氏が監督を務めました。元社員であり、チームのスカウトにも関わった井箟重慶氏もチームを支えた一人です。

丸善石油硬式野球部は、短くない活動期間の中で、社会人野球の主要大会で優勝・上位進出を繰り返し、特に都市対抗野球における四国勢唯一の優勝という不滅の記録を残しました。母体企業の運命と共に歴史を閉じましたが、その輝かしい軌跡は、愛媛県そして日本の社会人野球史において重要な一頁を占めています。

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