丹波立杭焼

丹波立杭焼（たんばたちくいやき）

丹波立杭焼は、兵庫県丹波篠山市今田地区周辺で生産される陶器です。古くから生活雑器を中心に焼かれてきました。丹波焼、または立杭焼とも呼ばれます。その起源は平安時代末期にまで遡り、日本六古窯の一つとして数えられています。

特徴

中世の丹波焼は、赤みを帯びた土肌に、焼き締めによる自然釉が特徴です。備前焼や信楽焼と比較して、若草色のような落ち着いた色合いの作品が多く見られます。江戸時代以降は、釉薬や技法が多様化しましたが、現代の丹波焼にもその伝統的な風合いが受け継がれています。

古丹波

現在「古丹波」と呼ばれる焼き物は、丹波焼の創世期である平安時代末期から江戸時代末期にかけて作られたものを指します。この時代の丹波焼は、登り窯で約1300度という高温で50〜70時間も焼成されるため、薪の灰が釉薬と化合して窯変し、「灰被り」と呼ばれる独特の模様と色が現れます。また、炎の当たり方によって一つとして同じ表情の作品はなく、それぞれの個性が際立つのが大きな特徴です。

中世には、轆轤を使わない紐作りという手法で成形し、窖窯と呼ばれる独特の窯で釉薬を使わずに焼き締められていました。初期には、壺や甕、すり鉢などが主に作られていました。

江戸時代

江戸時代に入ると、登り窯が本格的に用いられるようになり、轆轤による成形も導入されました。特に、大量生産されたすり鉢は非常に堅牢であったため、17世紀には中部地方や関東地方以北に急速に普及しました。18世紀中盤に堺産のすり鉢が普及するまでは、東日本で瀬戸焼と二分するほどのシェアを誇っていました。

一方で、小堀政一（遠州）などの影響により、茶碗、茶入、水指といった茶器の分野でも数々の名器が生まれました。京都や美濃焼の影響を受け、「灰釉」や「赤土部釉」、「石黒釉」など様々な釉薬が開発され、これらの釉薬を用いた陶器が作られるようになりました。

江戸時代後期には、篠山藩の保護育成もあり、「直作」、「一房」、「花遊」、「一此」、「市作」、「此作」などの銘印が押された作品が作られるようになり、陶工たちは互いに技を競い合い、その名を世に轟かせました。また、京焼との交流によって、白化粧土で装飾を施した「白丹波」も作られました。これは「丹波のスリップウェア」とも呼ばれています。

現代

窖窯時代には「小野原焼」と呼ばれていましたが、登り窯時代に入って現在の「丹波焼」または「立杭焼」という名称が確立しました。1978年には「丹波立杭焼」として国の伝統的工芸品に指定されました。現在、今田町上立杭、下立杭、釜屋地区には約60軒の窯元があり、今田地区以外にも丹波立杭焼を名乗る窯元が多数存在します。

2017年4月29日には、丹波立杭焼は、備前焼、越前焼、瀬戸焼、常滑焼、信楽焼とともに、日本六古窯として日本遺産に認定されました。

陶器まつり

毎年10月の第3土曜、日曜日には「陶器まつり」が開催され、多くの人々が訪れ、窯元が立ち並ぶ小路は終日賑わいます。

文化財、関連施設

丹波篠山市
兵庫陶芸美術館
立杭陶の郷: 正式名称は「丹波伝統工芸公園 立杭陶の郷」。丹波立杭陶磁器協同組合が運営する施設です。近代的な建物内に56の窯元の作品が展示販売されており、それぞれの窯元の作風の違いを比較しながら自由に選ぶことができます。年間十数万人の集客があります。
丹波焼陶芸会館

参考文献

矢部良明,他編集委員23名 編『角川 日本陶磁大辞典』（普及版）株式会社 角川グループパブリッシング、2011年2月25日、545,857,880-881頁。ISBN 9784046219657。
誠文堂新光社 編『スリップウェア Slipware 英国から日本へ受け継がれた民藝のうつわ その意匠と現代に伝わる制作技法』誠文堂新光社、2016年1月、23頁。ISBN 9784416615980。
陶工房編集部 編『やきもの基本用語事典』株式会社 誠文堂新光社、2023年5月17日、152,177頁。ISBN 9784416523063。

関連項目

出石焼・珉平焼（兵庫県内の陶磁器産地）
日本の陶磁器産地一覧

外部リンク

丹波焼の概要と歴史 | [日本遺産] 日本六古窯 公式Webサイト
丹波焼（丹波立杭陶磁器協同組合サイト）
立杭 陶の郷 丹波焼の郷｜兵庫県篠山市にある総合施設
丹波伝統工芸公園 立杭陶の郷 - 近畿経済産業局
丹波伝統工芸公園 立杭陶の郷 - 篠山市観光情報

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