丹生川上神社下社

丹生川上神社下社について

丹生川上神社下社（にうかわかみじんじゃしもしゃ）は、奈良県吉野郡下市町長谷に位置する神社です。この神社は、式内社（名神大社）および二十二社（下八社）の論社として知られ、旧社格は官幣大社、現在は神社本庁の別表神社となっています。社名は、川上村にある丹生川上神社上社に対するものとして名付けられました。

祭神

丹生川上神社下社の祭神は、闇龗神（くらおかみのかみ）です。かつては高龗神が祀られていましたが、大正時代に祭神が変更されました。また、一説には、この神社は「丹生大明神」を祀っており、それは丹生都比売神社（和歌山県伊都郡かつらぎ町）の祭神である丹生都比売神であるとも言われています。

歴史

神社の創建については、正確な記録が残っていません。土地の古老の伝承では、丹生社の鳥居が洪水で流れてきたものを拾い、神体として祀ったのが始まりとされています。しかし、神社の背後にある丹生山山頂には祭祀遺跡と思われる石群があり、また、社前を流れる丹生川流域には多くの丹生神社が点在していたこと、さらに、かつては多くの井戸が湧き出ていたことなどから、古くから水神信仰があったと考えられます。

江戸時代前期以降、式内社の所在地に関する考証が進むと、当神社が「式内大社 丹生川上神社」に比定される有力な候補となりました。朝廷や幕府もこれを認め、祈雨の奉幣や国家安泰の祈願が行われました。しかし、文久3年（1863年）には、天誅組の蜂起に社家の者が関与したため、本殿が兵火で焼失するなどの被害を受けました。

明治時代に入ると、一時的に当神社は式内社ではなく、高龗神社が式内社であるとされました。この時、当神社は「口の宮」と称され、高龗神社が「奥の宮」とされました。しかし、後にこの説が覆され、明治29年（1896年）に当神社は「丹生川上神社下社」、奥の宮は「同上社」と改称され、両社を合わせて「官幣大社丹生川上神社」とされました。

その後、大正時代には、中社を丹生川上社とする説が有力になり、内務省告示によって、上社・下社は中社に包括される形となりました。この際、当神社の祭神も高龗神から闇龗神に改められました。第二次大戦後、昭和27年（1952年）に独立し、現在は神社本庁の別表神社となっています。

神職

明治5年（1872年）までは、世襲の神職（社家）が「公文所」や「社人」として存在していました。これらの社家は、文明年間（1469-87年）に起源を持つと伝えられています。近世には、橋本・乾・河（川）合・中井・向井・今西の6家が奉仕しており、これらは「川上六家」と呼ばれていました。官制時代に社職を離れましたが、子孫は現在も「神事係」として神社に関わっています。

境内

丹生川上神社下社の境内には、以下のような特徴的な施設やものが存在します。

社殿：本殿は三間社流造で、明治18年（1885年）に修築されたものです。拝殿は入母屋造平入で、明治34年に復建されました。社殿はいずれも近年の葺き替えで銅板葺となっています。
神馬：かつては朝廷から雨乞いには黒馬、晴れ乞いには白馬が奉納されていました。この水神信仰が絵馬発祥の起源とされており、京都の貴船神社へと受け継がれたとされています。近年、水害が多いことから、約600年ぶりに神馬献上祭が復興されました。
牛石・蛙石：牛石は牛に似た形状から、蛙石は蛙が立ち上がったような形状から名付けられました。牛は粘り強く歩むことから人生や商売の象徴とされ、蛙は瞬発力を持っていることから、両者は対照的な存在として並べられています。
産霊石：男根と女陰が重なり合う御神体で、子宝に恵まれた信者が川底から見つけて奉納したと伝えられています。
御食の井：御神水「いのちの水」が湧き出る井戸です。

摂末社

境内には、以下の摂末社があります。

八幡神社（応神天皇）
大山祇神社（大山祇命）
稲荷神社（稲荷大神）
祖霊社（川上六家の祖霊）

主な祭事

例祭（6月1日）：氏子の各戸から、朴の葉で包んだ鯖の姿鮨が神饌として供えられます。これは「人身御供」と呼ばれています。
太鼓（古）踊り：雨乞い祈願が叶った人々が喜びを分かち合ったのが起源とされる神事芸能で、県の無形民俗文化財に指定されています。

文化財

奈良県指定無形民俗文化財：太鼓（古）踊り

現地情報

所在地：奈良県吉野郡下市町長谷1-1
交通アクセス：近鉄吉野線下市口駅から奈良交通バスで「長谷」バス停下車

丹生川上神社下社は、その長い歴史と豊かな文化を持つ神社であり、訪れる人々に深い感動を与え続けています。

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