丹羽氏音

丹羽氏音（にわ うじおと）

丹羽氏音は、江戸時代中期に美濃岩村藩の第5代藩主、そして越後高柳藩の初代藩主を務めた人物です。氏次系丹羽家の6代目にあたります。彼の生涯は、藩主としての治世における財政改革と、それに伴う家臣団との対立、そして最終的な移封という波乱に満ちたものでした。

生い立ちと岩村藩主就任

丹羽氏音は、岩村藩2代藩主・丹羽氏信の子で、3代藩主・丹羽氏定の弟にあたる丹羽氏春の次男として生まれました。氏春は分家して旗本となっていました。貞享3年（1686年）3月、第4代藩主・丹羽氏明が亡くなった際、その末期養子となり、閏3月27日に家督を継ぎ、岩村藩主となりました。元禄5年（1692年）には従五位下・越中守に叙任され、その後、壱岐守、和泉守と改められています。元禄10年（1697年）には井上正任の娘と婚姻しています。

丹羽家騒動と高柳藩への移封

元禄15年（1702年）5月、岩村藩内で「丹羽家騒動」と呼ばれるお家騒動が勃発します。これは、藩の財政を立て直すために氏音が側用人に抜擢した山村瀬兵衛による苛烈な改革に対する家臣団の反発が原因でした。瀬兵衛は倹約を旨とし、家臣の秩禄を減らす減禄制や、新たな税を次々と制定し、領民から容赦なく税を取り立てました。これらの施策によって藩の財政は一時的に好転しましたが、領民や家臣団からの恨みを買うことになりました。特に、重臣の妻木郷左衛門を中心とした反対派が徒党を組み、瀬兵衛の排除を画策しました。

氏音は当初、瀬兵衛を擁護しましたが、事態の収拾がつかないと判断し、瀬兵衛を解任しました。しかし、反対派の動きは止まらず、ついには幕府に訴え出る事態となります。幕府の裁定の結果、瀬兵衛は無罪とされ、反対派の30人は処罰されました。しかし、氏音自身も政務を怠ったとして、9千石を没収され、越後高柳藩1万石へ移封、さらに閉門蟄居を命じられました。この結果、岩村城は苗木藩主の遠山友春と信濃飯田藩主の堀親賢に引き渡されることになりました。

その後と死

元禄15年（1702年）12月24日、氏音は閉門蟄居を許されましたが、将軍綱吉への拝謁は許されませんでした。翌元禄16年（1703年）4月25日に赦免されましたが、高柳へ赴くことは認められず、江戸に留まることとなりました。宝永2年（1705年）閏4月7日、江戸で28歳という若さで死去し、浅草の海雲寺に葬られました。

氏音には男子がいなかったため、甥の丹羽薫氏が末期養子となり、高柳藩主を継ぎました。しかし、薫氏は後に播磨三草藩に移封され、一色丹羽氏の三草藩は廃藩置県まで続きました。

丹羽家騒動（徒党事件）の詳細

丹羽家騒動は、別名「元禄丹羽家騒動」「徒党事件」「山村氏事件」とも呼ばれています。当時、岩村藩は財政難に陥っており、重臣たちは打開策を見出せずにいました。そこで、氏音は山村瀬兵衛を側用人に抜擢し、財政改革を任せました。

瀬兵衛は、倹約を徹底し、減禄制の導入、新税の導入など、徹底的な財政改革を推し進めました。しかし、これらの施策は領民や家臣団の反感を買い、瀬兵衛に対する恨みは増大しました。また、瀬兵衛の強引なやり方は、老臣たちの嫉視と怨嗟を買い、ついには反対派が徒党を組む事態となりました。

氏音は事態を収拾するために瀬兵衛を解任しましたが、瀬兵衛は幕府に訴え出ました。その結果、反対派が処罰されることとなり、氏音自身も責任を問われることになりました。丹羽家騒動は、藩主の統治能力の欠如と、家臣団の対立が複雑に絡み合った事件でした。

参考文献

『岩村町史』　十五　岩村藩主時代　2　丹羽氏　p186～p192　岩村町史刊行委員会　1961年
『恵那郡史』　第七篇　第二十八章　諸藩分治　其一　丹羽氏五代　p213～p218　恵那郡教育会　1926年
『恵那市史　通史編　第2巻』　第二章　諸領主の成立と系譜　第三節　岩村領　二　丹羽家　p121～p125　恵那市史編纂委員会　1989年
『瑞浪市史　歴史編』　第二章　第二章　産業経済と事件　第四節　事件と騒動　一　岩村騒動　元禄丹羽家騒動　p720～p721 　瑞浪市　昭和49年(1974年)
『寛政重修諸家譜 第2 新訂』　第八十五　足利支流―一色　二篇・丹羽　二篇　p168～p175　堀田正敦 等　続群書類従完成会　1964年
『遠山来由記』　丹羽和泉守源氏音

もう一度検索