久保田巧

久保田 巧（くぼた たくみ、1959年2月2日 - ）は、東京に生まれた、日本を代表するヴァイオリン奏者である。

経歴

幼い頃から音楽への道を歩み始め、4歳でヴァイオリンを手にした。国内では桐朋学園の教育機関で才能を伸ばし、桐朋女子高等学校音楽科で学びを深めた後、桐朋学園大学ディプロマ・コースに進学し専門教育を受けた。

大学在学中には更なる研鑽を求めウィーンに留学し、ウィーン国立音楽大学で研鑽を積んだ。この過程で、日本の福島幸雄、西島英子、外山滋、江藤俊哉といった名教師たち、そしてウィーンでは世界的なヴァイオリニストであるヴォルフガング・シュナイダーハンの薫陶を受け、その確固たる演奏技法と音楽性を築き上げた。

1984年に日本でのリサイタル・デビューを果たして以来、精力的な演奏活動を続けている。オーケストラ奏者としても重要な役割を担っており、1987年からは国際的に高い評価を得ているサイトウ・キネン・オーケストラの主要メンバーとして、また1990年からは水戸室内管弦楽団の一員としても活動を共にしている。これらのオーケストラでの経験は、彼のアンサンブル能力や音楽的視野をさらに広げるものとなった。

また、演奏家としての活動と並行して、後進の指導にも情熱を注いでいる。東京芸術大学で講師を務め、次世代のヴァイオリニスト育成に貢献している。

コンクールでの活躍

久保田巧は、若き頃から国際舞台でその才能を証明してきた。主要なコンクールでの受賞歴は以下の通りである。

1982年：第1回ロドルフォ・リピツァー賞ヴァイオリン・コンクールにて第2位を獲得した。
1983年：フリッツ・クライスラー国際コンクールで第2位、そして第3回ミケランジェロ・アバド国際ヴァイオリン・コンクールでは栄えある第1位に輝いた。
1984年：カール・フレッシュ国際ヴァイオリン・コンクールで第3位に入賞した。同年、ミュンヘン国際音楽コンクール（ARDミュンヘン国際音楽コンクール）ヴァイオリン部門で第1位を獲得した。このミュンヘンでの優勝は、日本人ヴァイオリニストとしては初の快挙であり、彼の名を国内外に広く知らしめることとなった。

これらのコンクールでの実績は、彼が技術的、音楽的に国際的な水準にあることを明確に示している。

ディスコグラフィー

久保田巧は、その演奏を数多くの録音として残している。主要なアルバムは以下の通りである。

『愛の喜び／クライスラー・アルバム』（1995年）：フリッツ・クライスラーの珠玉の小品集を収録。
『クロイツェル・スプリング』（1997年）：ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番を含む録音と推測される。
『プロコフィエフ：ヴァイオリン・ソナタ第1番＆第2番』（2003年）：セルゲイ・プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタを収録。
『バッハ：無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲』（2003年）：ヨハン・セバスティアン・バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全3曲を収録。
『バッハ：無伴奏ヴァイオリン・パルティータ全曲』（2004年）：ヨハン・セバスティアン・バッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ全3曲を収録。バッハの無伴奏作品はヴァイオリニストにとって試金石となる重要なレパートリーであり、その完成度への取り組みが伺える。
* 『ブラームス ヴァイオリン・ソナタ全集』（2008年）：ヨハネス・ブラームスのヴァイオリン・ソナタ全3曲を収録。

これらの録音は、クライスラーのような小品からバッハの無伴奏作品、プロコフィエフやブラームスのソナタといった大曲まで、彼のレパートリーの幅広さと深い音楽解釈を示すものである。

久保田巧の音楽活動は、ソロ、室内楽、オーケストラ、そして教育活動と多岐にわたり、日本のヴァイオリン界において確固たる地位を築いている。

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