九品官人法

九品官人法についての解説

九品官人法（きゅうひんかんじんほう）は、中国の魏晋南北朝時代に導入された官吏登用制度です。この制度は、220年に三国時代の魏の文帝である曹丕によって始まり、583年に隋の文帝によって廃止されるまで続きました。新たに科挙制度が設立されることになり、歴史的に大きな変遷をもたらしました。

制度の核心は、官僚を最高一品から最低九品まで、9つの等級に分類することです。この分けられた品位は「官品」と呼ばれ、各郡には「中正官」と呼ばれる役職が任命され、地元の有力者や人物を評価することが求められました。この評価は「郷品」として知られ、官僚の推薦に使われました。後に、中正官はさらに上位の行政区分である州の役職にも適用され、州大中正と称されました。これにより当時の貴族層による権力の集中が強化されました。

この制度は、後漢から魏へと権力が移行する過程で重要な役割を果たしました。主な目的は、後漢に仕官していた官僚の能力と忠誠度を見極め、新たに魏に必要な人材を確保することでした。従来の郷挙里選制に依存することなく、政府主導の人事制度を確立することを目指していました。しかし、実際には地方の影響力が郷品に反映されることから、当初の意図とは異なる結果が生まれました。

例えば、後漢末期には豪族勢力が台頭し、郷挙里選を通じて地方の実力者が官僚を推薦する仕組みがたちまち定着しました。これに対抗する形で九品官人法が策定されたものの、望ましい人材登用が行われるどころか、地方の権力関係がそのまま郷品に影響を及ぼす結果になりました。石を斧で叩くかのような難しい状況に対し、魏の夏侯玄は中特に中正官の権限の過大さを指摘し、彼らが意図的に特定の人々を優遇する傾向があることを訴えました。

さらに249年、司馬懿が政権を握ると、中正官よりも権限の強い州大中正を新たに設置し、地方の有力者がより強い影響を持つようになりました。時が経つにつれて、官僚の任命には個々の能力よりも親族の郷品や家柄が重視される傾向が強まり、特に親の社会的地位がそのまま子供に引き継がれる世襲的な状況が進行しました。

このような中で、郷品二品の地位を持つ家族は特別な地位にあり、「門地二品」とも称され、権力にアクセスできる条件が整っていました。これによって、実質的に官僚の任命権は有力な家柄に寄せられ、貴族の手に落ちてしまったのです。このような状況に対し、西晋の劉毅の言葉が象徴的です。「上品に寒門無く、下品に勢族無し」。この言葉は、社会のヒエラルキーが固定化し、庶民の進出が困難である様を端的に表現しています。

六朝時代に至ると、官吏が受ける待遇や役職にはさらに明確な格差が生まれ、「清官」と「濁官」という区別が設けられました。地方の役職などは忌避され、地位の高い者は短期間で権力が与えられました。こうした状況は、もともと九品官人法に基づいた人材管理システムが歪められていることを示しています。

九品官人法は南朝で長らく継続されましたが、北魏の孝文帝が部分的に取り入れつつ、新たな貴族を形成する試みも行われました。南朝の梁武帝による改革も重要で、官僚制度の再編成を通じて従来の制度を改変し、より流動性のある官職体系を目指しました。最終的に九品官人法はその効果を失い、隋代に入る事情で科挙にその座を譲ることになりました。

なお、九品による官僚の分け方はその後の日本の冠位十二階や位階制度などにも影響を与えています。こうして、九品官人法は中国の官吏制度の模索を経て、権力構造や社会の変遷に寄与する重要な役割を果たしました。

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