九広鉄路

九広鉄路（Kowloon-Canton Railway, KCR）

九広鉄路は、かつて香港の九龍と中国大陸の広州を結んでいた鉄道路線です。この路線は、香港側ではMTR東鉄線、中国大陸側では広深鉄路として現在も運営されています。九広鉄路は、香港と中国本土を結ぶ重要な交通網として、その歴史の中で大きな役割を果たしました。

歴史

九広鉄路の歴史は、20世紀初頭に遡ります。イギリス領香港を通る区間（九広鉄路英段、KCRBS）は1906年に建設が開始され、1910年に開通しました。一方、清国領を通る区間（九広鉄路華段）は1911年に開通しています。当初、九広鉄路は直通運転を行っていましたが、1949年の中華人民共和国成立に伴い、国境での分断運転を余儀なくされました。華段は深圳駅を終点とする広深鉄路となり、英段の終点駅は羅湖駅となりました。しかし、1979年には直通運転が再開され、香港と中国内陸部を結ぶ大動脈として機能しました。

1973年、英段では複線化事業が開始され、1975年には終点であった尖沙咀駅が移転し、九龍駅となりました。また、1982年には九広東鉄の電化が開始され、1983年には羅湖駅までの電化が完了しました。これにより、香港領内では新界北部の通勤路線としての役割を果たすようになり、沿線の宅地開発が急速に進みました。

1983年、九広鉄路は香港政府の部門から会社組織に転換し、九広鉄路公司（KCRC）が設立されました。しかし、政府が全株を所有し続けたため、労使関係や組織の硬直化が問題視されました。1988年には新界西北部に軽便鉄路（LRT）が開通し、1990年代には西部鉄路走廊の建設に伴い、九広鉄路英段は九広東鉄、軽便鉄路は九広軽鉄となりました。2003年には九龍中心部と新界中央部を結ぶ九広西鉄が完成し、LRTとの接続も実現しました。2004年には、九広鉄路の支線として九広馬鉄が開通し、新界沙田地区東側のベッドタウンと都心を結ぶ路線となりました。

両鉄合併

2007年12月2日、経営効率化のため、民営化されていた香港鉄路有限公司（MTR）に運営権が移譲されました。これにより、九広鉄路公司は車両と施設をMTRに貸し出す形となり、MTRの路線となるに伴い、九広東鉄は東鉄線、九広西鉄は西鉄線、九広軽鉄は軽鉄等と名称が変更されました。合併直前の2007年8月には、上水駅から伸びる落馬洲支線が開通し、香港と中国深圳との間の出入境検査場へのアクセスが改善されました。九広鉄路の全駅では、非接触型ICプリペイドカードであるオクトパスが利用可能です。また、九広鉄路公司はKCR路線上の駅から周辺の住宅地まで旅客を輸送するフィーダーバス路線も展開していました。

路線

沙頭角支線（廃線）

粉嶺 - 洪嶺 - 禾坑 - 石涌凹 - 沙頭角
1912年開通、1928年廃止。

当初、九広鉄路（英段）は軌間610mmの軽便[[鉄道]]として建設されましたが、途中で標準軌（1435mm）に変更されました。このため、不要となった軽便[[鉄道]]用の資材や車両を転用して建設されたのが沙頭角支線です。全線11.67kmを55分かけて走行し、客車には屋根がないトロッコのような台車が使用されていました。1927年に並行する道路が開通すると乗客が激減し、翌年廃止されました。

和合石支線（廃線）

粉嶺 - 和合石
1949年開通、1983年廃止。

粉嶺駅の南側から分岐し、和合石へ至る路線で、途中駅はありませんでした。和合石には大規模な墓地があり、埋葬する遺体を運ぶ霊柩列車を運行するために建設され、清明節や重陽節には臨時の旅客列車も運行されました。九広東鉄の電化に伴い廃止されました。

施設

香港鉄路博物館

注釈

九広鉄路の歴史は、香港の鉄道史において重要な位置を占めています。
MTRとの合併により、九広鉄路の名称は消滅しましたが、その路線は現在も香港の主要な交通網として機能しています。

関連項目

香港の鉄道
香港MTR
広深港高速[[鉄道]]

外部リンク

* KCRC

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