九戸氏

九戸氏（くのへし）について

九戸氏は日本の氏族の一つであり、主に陸奥国、現在の岩手県を拠点としていた武家です。彼らは九戸党とも称され、特に１１代目の九戸政実が「九戸政実の乱」で知られています。この氏族は、中野氏、高田氏、坂本氏、上野氏、小軽米氏、江刺氏、姉帯氏など、多くの子孫や関連氏族を持っています。

出自の起源

九戸氏の起源は、南部氏の祖である源光行の六男である九戸行連にさかのぼると言われています。行連が陸奥国九戸郡伊保内（現在の九戸村）を領有し、そこから九戸氏を名乗るようになりました。しかし、南部氏の研究において光行が陸奥国に下向していない可能性も指摘されており、行連の領有を信頼することが難しくなっています。

また、九戸氏にまつわる異説も存在します。たとえば、九戸神社に伝わる「小笠原系図」によれば、結城親朝の配下の小笠原政康の5代の孫が九戸氏の始祖とされています。さらに、軍記物の『九戸軍談記』では九戸政実を結城氏の末裔と見なす記述もあります。ただし、伝承の信憑性については疑問が残ります。

九戸氏に関する確実な史料は、永禄6年（1563年）に存在し、そこでは九戸五郎という名が見られます。この五郎は九戸政実であると考えられています。加えて、九戸氏は二階堂氏と何らかの関係があったことが古文書からも示されています。

歴史の流れ

九戸氏は、初代行連から戦国時代末期の政実まで11代の系譜が存在します。また別の資料では、政実を14代目としていますが、歴代の詳細な事蹟は不明な部分が多いです。

当初、九戸氏は大館村に居を構えていましたが、のちに九戸の地に移り、九戸城を築城しました。この移転は九戸光政か信実の代に行われたとされています。政実が岩手郡に出陣し、安東氏との戦いで武功を挙げた際には、南部晴政から領地の加増も受けています。

政実が三戸南部氏とともに陸奥国の有力な大名となったのは、信実や信仲の代です。しかし、政実の時代に、三戸南部氏の後継者争いが激化し、彼自身の不満が募っていきました。これが後に「九戸政実の乱」に繋がります。

天正19年（1591年）、政実は南部氏の正月参賀を拒否し、5千人の兵を率いて挙兵しました。九戸氏の支持を受けながらも、最終的には豊臣秀吉の鎮圧軍に敗れ、政実は降伏し処刑されました。彼の遺体は後に同じく処刑された他の武将たちと共に葬られ、九戸氏は滅亡しました。

系譜について

九戸氏の系譜をたどると、南部光行を祖としたさまざまな氏族が存在しています。特に姉帯氏や中野氏、小軽米氏などが九戸氏の庶家として続いていきました。中野氏は九戸氏から独立した後も、南部家中で「御三家」の一つとして長い歴史を持ち続けています。

総じて、九戸氏はその出自や歴史において多くの謎と興味深い伝承がある氏族であり、日本の武士階級の一端を成す重要な存在でした。

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