九鬼 (アダルトビデオ)

九鬼（KUKI）とは

九鬼（くき、KUKI）は、かつて存在した日本のアダルトビデオメーカーです。1980年代初頭からAV制作に携わり、業界の草分け的存在として知られています。株式会社KUKIは2017年に解散しましたが、その歴史と影響は今もなお語り継がれています。

概要

九鬼は、アダルトビデオ黎明期から独自の路線を貫き、数々のヒット作品を生み出してきました。当初は自販機本やカセットブックの制作からスタートしましたが、1980年代初頭にはビデオ制作に本格的に参入。ラブホテルの流出ビデオや裏ビデオを編集した作品で、従来のAVとは異なる斬新なスタイルを確立しました。

グループ企業には、インターネット事業を展開する株式会社アルケミアや、衛星放送事業を担当するアスパイアビジョン株式会社などがあります。全盛期には映画製作やクラブ運営などにも進出し、一大グループを形成しました。2000年代以降は、グループ各社がそれぞれの分野で実績を上げています。

歴史

草創期〜1980年代

1977年4月、中川徳章氏をオーナーとして設立されました。設立当初は、アリス出版の下請け編集プロダクションとして活動していましたが、1978年頃から自社での出版を開始。「LANDA-S.S.」や「LANDA-G.R.」といったブランドで、自販機本やカセットブックを制作しました。

その後、「九鬼（KUKI）」の名前を前面に押し出し、ビニール本の制作を開始。グリーン企画（後の白夜書房）、ハミング社（宇宙企画）、群雄社出版（VIP）と並び、ビニール本の大手として知られるようになりました。

1980年代初頭にはビデオ制作にも参入しましたが、1983年に出版業からビデオメーカーへと業態を転換。「九鬼」ブランドとして本格的なAV制作を開始しました。初期には、ラブホテルの流出ビデオを編集した『消し忘れビデオ』や、裏ビデオをダイジェストした『裏ビデオ通信』など、ストーリーものや素人本番ものが中心だった当時のAV市場では異色の作品をリリースし、大ヒットを記録しました。

その後も、プライベートビデオ愛好家の作品を編集した『プライベート・ビデオ・チャンネル』シリーズや、伊勢鱗太朗監督の『風俗ギャル通信』など、ユニークな企画ものを次々と発表しました。1984年8月には、AV女優による「本番」路線へとシフトし、森冬美、杉田とも子、香坂和子らの主演作が人気を博しました。1985年には、美形AV女優として人気を博した中川えり子がデビュー。デビュー作の『えり子の本番』は大ヒットし、彼女は九鬼の看板女優として数々の作品に出演しました。また、同年には豊田薫監督が、高野みどりの主演作『少女うさぎ　腰ひねり絶頂!?』でデビューしました。

1980年代後半には、伊勢鱗太朗監督が、漫画家やミュージシャン、俳優、ゲイといった異分子を起用した、ドラマと現実が交錯する斬新な作品で注目を集めました。また、特撮監督として知られる実相寺昭雄監督も、九鬼で『アリエッタ』『ラ・ヴァルス』などの作品を制作。『アリエッタ』は同社の1989年の年間トップの売り上げを記録するヒットとなりました。

1990年代〜現在

1989年には伊勢鱗太朗がダイヤモンド映像に移籍。単体女優ものを中心とした路線へとレーベルカラーが変化しました。同年にはサブレーベル「VINL（ビニール）」、1991年には「SONIA」、1993年には「Velvet Blue」と、単体女優向けのレーベルを次々と立ち上げましたが、レーベルごとの作品傾向に大きな違いはなく、その後単体系は「VINL」と1994年に立ち上げられた「TANK」の2レーベルに集約されました。1990年代の九鬼には、希志真理子、水野愛、三浦あいか、早坂絵麻など、多くの人気女優が所属していました。

また、1990年代前半に始まった企画ものブームを受け、1991年から「九鬼」レーベルで企画ものの制作を開始。1994年には専用レーベル「DEVIL（後のSUPER DEVIL）」を立ち上げました。1997年には「egg2（エグエグ）」、「PRIVATE SEX」レーベルを立ち上げ、「PRIVATE SEX」レーベルの『THE SEXライヴ』シリーズはロングセラーとなりました。

2000年以降は、単体系レーベルのうち「VINL」が「綺麗」に入れ替わり、2005年には「toriko」がスタートしました。単体女優では苺みるく、大空あすか、西野翔などが人気を集めました。企画もの向けレーベルは、「egg2」が「冒険ゴリラ」へと引き継がれたほか、「PRIVATE SEX」「SUPER DEVIL」が終了し、「嵐」「toriko blue」が新たに立ち上げられました。

1990年代から2000年代にかけては、インターネットの商用利用に積極的に取り組みました。1995年には、他のAVメーカーに先駆けて商用アダルトサイト「KUKI TOWER」を開設。1996年には、他のAVメーカーも巻き込んだ会員制アダルトポータルサイト「THE CITY」（現「X CITY」）の運営を開始しました。1997年には同サイトでストリーミング配信を開始し、ADSLが普及し始めた2001年にはブロードバンド配信に対応しました。

2014年を最後にDVD復刻作品のリリースも停止しており、2020年現在、パッケージ作品のリリースはしていませんが、X CITY限定でKUKIレーベル作品を新作も含めて配信しています。

主要レーベルと活動期間

KUKI／KUKI SPECIAL／九鬼　（1983〜）
VINL （ビニール）　（1989〜2003）
SONIA （ソニア）　（1991〜1993）
Velvet Blue （ベルベット・ブルー）　（1993）
TANK （タンク）　（1994〜）
DEVIL／SUPER DEVIL　（デビル／スーパー・デビル）　（1994〜）
龍 （ロン）　（1994〜1996）
MOON （ムーン）　（1996〜1997）
egg2　（エグエグ）／冒険ゴリラ　（1997〜）
PRIVATE SEX　（プライベート・セックス）　（1997〜2003）
嵐　（2003〜）
綺麗　（2003〜）
toriko／toriko blue　（トリコ／トリコ・ブルー）　（2005〜）
KUKI2.0　（2019〜）

関連レーベル

ENGEL　（1999〜）

グループ企業

アルケミア

1995年9月18日設立のデジタルコンテンツ配信事業者です。アダルト動画サービス『X CITY』の運営・管理、ブラウザゲーム・アプリゲームの開発を主な事業としています。かつてはブラウザゲームサイト『GameComplex』を運営していました。

アダルトサイトとしては、いち早く多言語対応を行い、1995年に英語、1998年に韓国語、2002年に中国語に対応しました。

ゲーム開発としては、レッド・エンタテインメント、ハドソンと共同で『天外魔境 JIPANG7』を開発しましたが、2011年4月12日に正式リリースしたものの、わずか3か月後の7月26日にサービスを終了しています。

その他、2010年には、ももいろクローバーの楽曲「ココ☆ナツ」を題材としたiPhoneアプリ『momodule 01』を開発しました。2020年6月には、ライブ配信サービス『8181Live』の運営を開始しています。

アスパイアビジョン

1998年2月設立の放送事業者です。レッドチェリー、チェリーボムなどのスカパー・アダルト放送チャンネルを運営しています。

お楽しみ研究所

2015年10月5日に法人番号指定を受けた、KUKIグループの1社です。音楽にまつわる事業を展開しており、渋谷のクラブ「HARLEM」や「WOMB」などを運営・管理しています。また、HIP HOP/R&Bレーベル「HARLEM RECORDINGS」も運営しています。

過去には、関連会社のフォームが立ち飲み洋風居酒屋や音楽スタジオを経営していました。

関連項目

レッドチェリー - アスパイアビジョン運営のCSテレビチャンネル
チェリーボム - アスパイアビジョン運営のCSテレビチャンネル

外部リンク

KUKIオフィシャルホームページ（ウェイバックマシン）

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