乞乞仲象

乞乞仲象の歴史的背景

乞乞仲象（きつきつ ちゅうしょう、生年不詳 - 699年）は、渤海を建国した大祚栄の父として歴史に名を刻んでいます。彼に関する情報は『新唐書』に記載されており、彼が粟末靺鞨出身であること、さらにその時代に起こった反乱に関与していたことが記されています。具体的には、彼は粟末靺鞨の酋長乞四比羽と協力し、営州都督の趙文翽に反旗を翻しました。

名前の由来

乞乞仲象という名前は、高句麗人であるとは考えられない靺鞨人の名であるとされます。言語学者の稲葉岩吉は、「舎利乞乞仲象」の「舎利」が女真語の「泉」を意味することに触れ、その名称の文化的背景を考察しています。史書において、乞乞仲象は「大」姓を持っておらず、彼の名前はおそらく本族語に由来しています。それに対し、姓「大」の使用は、息子である大祚栄が王として国家を設立して以降のことだとされています。また、現代の永順太氏一族は乞乞仲象をその祖先として崇拝しています。

官職について

井上秀雄によると、乞乞仲象は「舎利」という官職を持っており、それは契丹における軍の指導者を示しています。彼の地位は『五代会要』や『遼史』の記録に基づいて確認でき、舎利は権力を象徴する称号とされています。このことから、乞乞仲象は契丹系の豪族であった可能性があります。

しかし、森安孝夫は舎利の名称が靺鞨にも存在していることを指摘し、乞乞仲象と大祚栄は父子関係である可能性が高いと論じています。韓国の文献によると、乞乞仲象は高句麗に従属していた粟末靺鞨の酋長だったとされ、彼の背景が渤海建国にどのように寄与したのかが考察されています。

乞乞仲象と大祚栄の関係

『新唐書』の記録では、乞乞仲象と大祚栄は父と子とされていますが、『旧唐書』には乞乞仲象の名前がなく、その存在を疑問視する学者もいます。池内宏は、乞乞仲象は営州地域における彼の本名であり、大祚栄は後に用いられた漢名だと提唱しました。一方で、鳥山喜一は両者は異なる人物であるとし、新妻利久は父子関係の存在を支持しています。

渤海建国の際、靺鞨群体を率いていたのは乞四比羽であり、高句麗からの遺民を導いたのが大祚栄でしたが、記録が異なります。『新唐書』が参照した『渤海国記』文献において、乞乞仲象が大祚栄の父であるとされる背景には、唐に叛くことになった大祚栄を守る意図があったと考えられています。

結論

乞乞仲象の存在は、渤海の成り立ちとその後の歴史理解に不可欠な要素です。彼と大祚栄の関係や、その文化的背景には様々な解釈があり、多くの研究が進められています。乞乞仲象は、単なる歴史上の人物とは言えず、渤海王朝の基盤を築いた重要な役割を果たしたことが評価されるべきでしょう。

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