予備予選 (F1)

F1における予備予選：過酷なサバイバルレース

F1の歴史において、予選への参加資格を争う「予備予選」というシステムが存在しました。これは、エントリー台数が規定数を上回った際に、予選進出チームを絞り込むために導入されたものです。主に1988年から1992年、そして2004年シーズンに採用され、特に1988年から1992年にかけては、F1界において大きな意味を持っていました。

1988年から1992年の予備予選

この時代のF1は、予選出走台数の上限が30台に設定されていました。そのため、30台を超えるチームがエントリーした場合、予備予選が実施されました。

1988年は、初日の午前中のフリー走行が予備予選を兼ねており、予備予選対象チームの中から上位4チームが予選に進出できました。しかし、エントリー数の増加に伴い、1989年からはフリー走行前に1時間の予備予選が設けられるようになりました。予備予選を通過できなかったチームは、「Did Not Pre-Qualified (DNPQ)」と記録されました。

予備予選免除となるのは、直近の成績上位13チームの26台でした。それ以外のチーム、特に新規参入チームは予備予選に参加しなければなりませんでした。予備予選免除チームの選定は、シーズン開幕時と後半戦開始時の2回行われ、コンストラクターズ順位に基づいて決定されました。シーズン前半戦で好成績を残したチームは後半戦の予備予選を免除されましたが、逆に前半戦で予備予選免除だったにもかかわらず、成績不振に終わったチームは後半戦で再び予備予選から戦う必要がありました。

1チーム1台のエントリーも認められていたため、コンストラクターズ順位によっては、2台エントリーのチームのうち1台だけが予備予選に出場しなければならないという状況も発生しました。例えば、1989年前半戦ではリアル、スクーデリア・イタリア、AGSが、1992年前半戦ではフォンドメタルが、前年の成績から予備予選免除となりましたが、前年が1台エントリーだったため、2台目については予備予選参加を余儀なくされました。これらのケースでは、予備予選免除枠が繰り上がって26台に満たされるまで、予備予選免除が決定されました。

予備予選の参加台数は徐々に減少していき、1990年末にはエントリーが30台以内となり、一度廃止されました。しかし、1992年後半には対象チームが撤退したため、エントリー数が30台を下回り、第11戦ハンガリーグランプリを最後に予備予選は消滅しました。

予備予選の壁：新規参入チームの試練

1989年にターボエンジンが禁止され、自然吸気エンジンへの移行が行われました。これにより、F1への参入障壁が下がり、新規チームの参入が活発化しました。しかし、これらの新興チームにとって、予備予選は大きな壁となりました。フリー走行よりも前に実施された予備予選では、セッティングデータが不足しているため、厳しい戦いを強いられました。また、パドックも粗末なものが割り当てられるなど、予備予選対象チームは不公平な扱いを受けました。予備予選敗退チームは、グランプリの雰囲気を味わうことなくサーキットを去らなければなりませんでした。

コローニ、AGS、ユーロブルンなどの弱小チームは、資金難と予備予選の壁に苦しみ、低迷したまま撤退しました。ライフに至っては、一度も予備予選を突破できずに撤退しています。

一方、ブラバム、スクーデリア・イタリア、オニクス、ラルース、ジョーダンなどは予備予選を危なげなく通過し、決勝でも好成績を残しました。

常に上位を争っていたフェラーリ、マクラーレン、ウィリアムズ、ベネトン、ティレル、そしてロータス、マーチ（レイトンハウス）、ミナルディなどは、予備予選を経験していません。

日本関連では、コローニのスバルエンジン、ザクスピードのヤマハエンジンは予備予選落ちを繰り返し、フットワークのポルシェエンジンも不発に終わりました。鈴木亜久里はザクスピードで1989年シーズン、全戦予備予選落ちという記録を残しました。片山右京も1992年モナコグランプリで予備予選落ちを経験しています。

2004年の予備予選

2004年シーズンの予備予選は、土曜日に2回行われた予選セッションのうち、最初のセッションを指します。このシステムでは、予選1回目の順位が予選2回目の出走順位を決めるため、予備的な意味合いしか持たず、「予備予選」と呼ばれていました。予備予選と予選2回目の間は燃料補給が自由だったため、予備予選では燃料を節約し、予選2回目の順位を上げる戦略が用いられました。

まとめ

F1における予備予選は、予選進出枠を争う過酷なシステムでした。特に1988年から1992年にかけては、多くのチームの明暗を分け、F1の歴史に大きな影響を与えました。予備予選は、F1における競争の激しさと、弱小チームが置かれた厳しい状況を象徴する出来事と言えるでしょう。また、このシステムを通して、数々のドラマや悲劇が生まれ、F1の歴史に刻み込まれることとなりました。そして、予備予選を経験したドライバーやチームは、その経験から多くの学びを得て、F1での更なる成長へと繋げていったのです。

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