二人だけの戦場

バウ・ミュージカル『二人だけの戦場』

宝塚歌劇団雪組が1994年に初演したバウ・ミュージカル『二人だけの戦場』は、「夢」を売る宝塚歌劇団において、民族問題や戦争といったテーマに正面から取り組んだ意欲作です。作・演出は正塚晴彦が担当し、法廷劇を交えた斬新な舞台進行が内外から注目を集めました。また、名古屋特別公演は一路真輝と花總まりのトップコンビお披露目公演としても話題となりました。

公演期間と公演場所

1994年1月15日 - 1月30日：宝塚バウホール
1994年2月4日 - 2月13日：日本青年館・大ホール（東京特別）
1994年10月1日 - 10月3日：愛知厚生年金会館（名古屋特別）
2023年4月29日 - 5月6日：梅田芸術劇場メインホール
2023年5月13日 - 5月19日：東京建物 Brillia HALL

あらすじ

物語は、ヨーロッパの片隅にある某連邦国家で開かれた軍事裁判から始まります。被告はティエリー・シンクレア、罪状は上官殺害です。名家出身で品行方正な青年士官であった彼が、なぜこのような罪を犯したのか。物語は、数年前に遡ります。

シンクレアは親友クリフォードと共に士官学校を卒業し、独立の機運が高まるルコスタ州のクロイツェル基地へと赴任します。理想に燃え、自らクロイツェルへの配属を志願したシンクレアに対し、クリフォードは呆れ返ります。卒業の夜、二人は酒場でジプシーの踊り子ライラと出会います。彼女が酔った軍人に絡まれているところを助けたシンクレアは、彼女に惹かれていきます。後日、シンクレアはライラに落とした首飾りを届けにジプシーのキャンプを訪ねます。そこで、中枢民族である士官がジプシーの住む場所へ足を踏み入れることの珍しさを感じながらも、ライラはシンクレアに心を開き始めます。

シンクレアはライラが、クロイツェル基地の長官ハウザーと親交があるジプシーの首長シュトロゼックの娘であることを知ります。ジプシーの集落を訪れ、彼らと触れ合う中で、シンクレアは民族の違いの小ささ、無意味さを実感していきます。そして、ライラとの距離を縮め、互いに惹かれあっていきます。

しかし、そんな二人を引き裂くかのように、基地が地元のジプシー青年によるテロ集団に襲撃されます。事件を機に、ライラの兄であるアルヴァに疑いの目が向けられます。シンクレアは、ジプシーだからという理由で兄を疑うのかと憤るライラに、愛を貫く覚悟を伝えます。

基地と地元民族との緊張が高まる中、シンクレアはカフェの女主人エルサから、アルヴァの無実と、今回の襲撃が仕組まれたものであることを知らされます。シンクレアは、事態の収拾を図ろうと奔走しますが、連邦制の象徴である大統領の死をきっかけに、ルコスタは独立へと動き出します。親友クリフォードからは自重を促されるも、シンクレアは自身の正義を貫こうとします。物語は、激動の時代に翻弄される人々の愛と葛藤を描いていきます。

スタッフ

作曲・編曲：高橋城
振付：謝珠栄
装置：大橋泰弘
衣装：任田幾英
照明：沢田祐二
演出助手：藤井大介
振付助手：伊賀裕子
装置補：新宮有紀
衣装補：田口美香
音楽製作：野村修
製作：細川勝幸
制作：古澤真

出演者一覧

1994年版

専科

雪組

2023年版

専科

花組

参考文献

國眼隆一 著、編集：森照実・春馬誉貴子・相井美由紀・山本久美子 編『すみれ花歳月を重ねて―宝塚歌劇90年史―』宝塚歌劇団、2004年4月1日。ISBN 4-484-04601-6。NCID BA66869802。全国書誌番号:20613764。

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