二本木 (熊本市)

二本木（にほんぎ）

熊本市西区に位置する二本木は、その歴史と地理的特徴から、多様な側面を持つ地域です。ここでは、その詳細について解説します。

地理

二本木は、熊本市西区の南東部に位置し、北は熊本駅のある春日町、南は蓮台寺と接しています。東側には白川、西側には坪井川が流れ、この二つの川に挟まれた南北に細長い地形が特徴です。坪井川はかつて白川に合流していましたが、加藤清正の熊本城築城に伴う城下町整備により、白川から分離され、現在の形になりました。

河川

二本木を特徴づける主な河川は以下の二つです。

白川：町の東側を流れ、地域に潤いを与えています。
坪井川：町の西側を流れ、かつては白川に合流していました。

名前と歴史

二本木の名前の由来は、国府鎮護の護国寺（現在の古町グランド付近）の裏門近くに二本の木があったという説が有力です。

二本木の歴史は古く、弥生時代にはすでに人が住んでいたと考えられています。二本木町の湯ノ原（現在の二本木五丁目付近）からは弥生土器が出土しており、その文様は宮崎県日向地方のものと同系統であるという興味深い事実もあります。

奈良時代には、二本木遺跡群の調査から、この地に何らかの役所があったと考えられています。また、平安時代から約800年にわたり、肥後の国府（飽田国府）が置かれ、熊本の中枢として機能しました。国府庁は一時、現在のKAB付近にあったと推定され、その後、湯の原や車屋敷付近に移転しました。

古代から中世

861年: 国府庁が湯の原（現二本木5丁目）に創建されました。
893年: 寛平の韓寇により、この地も被害を受けました。
932年: 不動院松林寺が草創されました。
934年: 北岡神社の前身である祇園宮が創建されました。
937年: 国府庁と祇園宮が車屋敷（現二本木二丁目）付近に移転しました。

戦国時代から江戸時代

1580年: 阿蘇氏と島津氏の合戦（旦過の瀬合戦）が白川河川敷で行われました。
1757年: 熊本藩主・細川重賢により医学校再春館が設立されました。
1793年: 二本木御殿（屋形）の建設が開始されました。
1803年: 細川治年の正室謡台院が二本木御殿で逝去されました。

近代

1872年: 廃藩置県により白川県が誕生し、県庁が古町村に設置されました。明治天皇もこの地を訪れています。
1874年: 古町村、宮寺村、久末村の一部が合併し古町村となりました。田崎学校（現古町小学校）が創設されました。
1875年: 白川県庁に警察部が設置され、後に県庁が熊本城に移転しました。これにより、県名も熊本県に改称されました。
1877年: 西南戦争時、薩軍本営が二本木神社横の質屋に置かれました。
1879年: 伝染病専門病院である二本木避病院が設置されました。
1906年: 二本木遊廓の入り口として三橋橋が完成しました。遥拝大明神社が二本木神社に改称されました。
1921年: 熊本市に編入され、二本木と改称されました。

近現代

1927年: 有明海台風により二本木病院本館が倒壊しました。
1953年: 6・26熊本大水害で大きな被害を受けました。
1978年: 白川橋際の不法建築撤去のため、改良住宅が建設されました。
2005年: 熊本朝日放送が国鉄病院跡地へ移転しました。

二本木遊廓

明治から昭和初期にかけて、二本木は西日本有数の遊廓街として栄えました。最盛期には73軒の遊廓と660人もの娼妓がいたと記録されています。主な施設としては、東雲楼、鶯楼、日本亭などがありました。

東雲楼は、数千坪の敷地に2階建ての大本屋と25の別棟があり、庭園は東海道五十三次を模していたといいます。遊女にはそれぞれ東海道の宿名が付けられ、世襲名として受け継がれていました。1900年には娼妓たちのストライキ事件が起こり、社会的な関心を集めました。その後、1957年の売春防止法施行により、遊廓は旅館や料亭に転業し、その歴史に幕を閉じました。

二本木遊郭を舞台とした書籍や映画も多数制作されています。

二本木の変遷

二本木は、肥後の国府が置かれていた時代には、四神相応の都のように称えられましたが、律令政治の崩壊と共に、一時的に中心地としての機能は失われました。その後も大きな集落として継続し、古国府と呼ばれるようになりました。二本木遺跡からは、華南三彩のトラディスカント壺が出土しており、南蛮貿易が行われていた可能性も示唆されています。

江戸時代には、細川藩の藩主の正室が住む二本木御殿が建てられ、西南戦争の際には西郷隆盛がこの地を訪れるなど、歴史的な出来事も多くありました。

産業と現在

二本木は、かつての繁華街であり、熊本駅に近いことから、ホテルや旅館、飲食店などのサービス業が盛んです。しかし近年、商店街の衰退が課題となっています。産業構造としては、第一次産業が0.8%、第二次産業が11.8%、第三次産業が82.2%（平成22年国勢調査）となっています。

名産品としては、昔の寿サイダーを復刻した二本木サイダーや、熊本ラーメンの有名店が数件あります。

交通と施設

二本木には、都市計画道路二本木小碩線が東西に横断し、田崎交差点から南北に通っています。鉄道は、JR九州の熊本駅が徒歩圏内にあり、熊本市電の駅も近隣にあります。また、熊本都市バスと九州産交バスが利用できます。

主な施設としては、熊本朝日放送、肥後銀行事務センター、黒亭（ラーメン店）、東庵（料理店）、熊本出版文化会館、古町小学校、古町幼稚園、二本木郵便局などがあります。

遺跡と神社仏閣

二本木には、二本木遺跡群、田崎本町遺跡などの遺跡があります。また、加藤清正が行った石塘や、白川県庁跡の記念碑も残っています。

神社仏閣としては、二本木神社、宮寺熊野座神社、常通寺、光伝寺、清祐寺などがあります。二本木神社は、西郷本営跡としても知られています。

ゆかりのある人物

二本木には、多くの歴史上の人物や著名人が関わっています。清原元輔や藤原保昌などの古代の人物から、牛島憲之や富永登茂などの近現代の人物まで、幅広い分野で活躍した人々がこの地にゆかりを持っています。

二本木は、その歴史と文化、そして人々の生活が織りなす、独特の魅力を持つ地域です。

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