于吉

于吉の生涯と運命

于吉（う きつ、？ - 200年）は、中国後漢末期に生きた道士であり、徐州琅邪郡の出身です。彼は特に病気治療に注力し、道教の信仰を広める活動を行っていました。彼の存在は、『三国志』の呉書「孫策伝」にも取り上げられ、彼の信仰を持つ者たちからは大きな尊敬を受けていました。

道士としての活動

于吉の祖先は東方に住んでおり、彼自身も呉郡や会稽の地域で精舎を築いていました。香を焚き、道教の経典を誦読し、符や神聖な水を使って病を治すことが彼の主な活動でした。このような背景から、地域の人々からは「神のような存在」として崇められるようになりました。

孫策との出会い

ある日、孫策が呉郡の城門で宴会を開いている最中、于吉は華やかな装束を着て現れました。彼が地面に小さな函を引きずりながら通り過ぎると、宴会の参加者たちはその姿を見て次々と下りてきて拝礼しました。宴会係の役人が彼を止めようとしたものの、取り押さえることができませんでした。

この様子に孫策は激怒し、于吉を捕らえるよう命令を出しました。あまりの人気と信仰から、于吉を救ってほしいと多くの信者たちが妊娠した妻や娘を孫策の母の元に送り、助命を嘆願しましたが、孫策はこれを無視し、于吉を斬り捨ててその首を市場に掲げました。

于吉の死とその影響

まず于吉を信仰していた人々は、彼が本当に死んだとは信じず、尸解したと信じ続けました。彼の神聖さを求めて祭りを続ける人々も多かったのです。

その後の『志林』によれば、于吉は順帝の時代に山で薬草を探している際に、神書『太平清領道』を見つけました。このことから彼は高齢であるにもかかわらず、道教の権威として周囲から尊敬を受けていたことが示唆されています。著者の虞喜は、于吉に対する死罪は大きな誤解であり、彼を殺した孫策の行為は非常に不名誉であると論じています。

孫策の悪化する運命

『捜神記』によれば、孫策は于吉を連れて許都を襲撃しようとしましたが、旱魃のために苦境に立たされます。この際、兵士たちが于吉を助けることをしなかったため、孫策は再び彼を逮捕し、雨を降らすよう命じました。祈りが通じたのか、急に雨が降り出しましたが、その直後に于吉は処刑され、遺体は消失してしまいました。

この事件以降、孫策は于吉の霊を頻繁に見るようになり、その呪縛から逃れられませんでした。彼は精神的に追い詰められ、最終的には不幸な結末を迎えます。彼が鏡を見た際に、于吉の姿が浮かび上がったこともあり、彼は恐怖から鏡を投げつけ、その結果致命傷を負ったとされています。

三国志演義における于吉

小説『三国志演義』では、于吉の物語は『江表伝』や『捜神記』を基にしつつ、物語が展開されます。孫策が于吉に雨を降らせるよう命じる場面は特に有名で、彼の運命は道士でありながら不幸にも悲劇的に終わる様子が描かれています。于吉は人々から信仰を受けた分、彼の死後もその影響力は残り続け、彼にまつわる伝説も広がったのです。

このように于吉の存在は、その活動や運命、及び後の影響において多くの人々の心に刻まれました。

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