五銭紙幣

五銭紙幣とは



五銭紙幣は、日本銀行が発行していた紙幣の一つで、五銭券または五銭札とも呼ばれます。額面は1円の20分の1と、日本銀行券の中で最も小さいものでした。この紙幣には「い号券」と「A号券」の2種類が存在し、いずれも1953年末に失効しています。

概要



五銭紙幣は、小額通貨の整理に関する法律により、他の小額紙幣や硬貨とともに廃止されました。製造中止となった五銭硬貨の代替として発行されましたが、硬貨の需要が根強く、流通量の大部分は硬貨が占めていました。現在では、未使用のものが古銭市場やネットオークションで取引されることがありますが、1枚での買取は難しく、大量にまとめて安い価格で取引されるのが一般的です。

い号券



発行と背景



1944年10月25日に大蔵省告示により様式が定められました。戦時中の金属不足により硬貨の材料が枯渇したため、五銭硬貨の代替として発行されました。当初は政府紙幣での代替が検討されましたが、迅速な対応が必要だったため、日本銀行券として発行されました。製造は印刷局ではなく、民間企業の共同印刷に委託されました。

デザイン



表面には、皇居前広場の楠木正成の騎馬像が描かれています。このデザインは、もともと十銭政府紙幣として準備されていたものを転用したものです。裏面は桐の模様と彩紋で構成されています。アラビア数字による額面表記はありますが、英語表記はありません。透かしは桐の図柄ですが、紙質が悪く確認が困難です。用紙は当初木材パルプに少量の三椏を混ぜたものでしたが、すぐに木材パルプのみの劣悪な品質に変更されました。

仕様




A号券



発行と背景



1948年5月25日に大蔵省告示により様式が定められました。終戦後、一旦五銭硬貨の製造が再開されましたが、材料不足とインフレにより再び困難になったため、五銭紙幣が再発行されました。連合国軍占領下であったため、デザインはGHQの許可を得て決定されました。

デザイン



表面には梅の花が描かれています。これは、「忍耐と努力により敗戦から立ち直ること」を象徴するものです。裏面は彩紋模様のみで構成されています。新字体・左横書き表記で菊花紋章は削除されており、当時の他の日本銀行券と共通の特徴を持っています。

仕様



  • - 額面: 五銭
  • - 表面: 梅
  • - 裏面: 彩紋
  • - 印章: 総裁之印（表面のみ）
  • - 銘板: 印刷局製造（実際は民間印刷会社が製造）
  • - 記番号: 赤色（組番号のみ、通し番号なし）
  • - 寸法: 縦48mm、横94mm
  • - 製造期間: 1948年5月20日～1948年6月29日
  • - 製造枚数: 6000万枚
  • - 発行開始日: 1948年5月25日
  • - 通用停止日: 1953年12月31日

変遷




五銭紙幣は、戦時中から戦後にかけての混乱期を象徴する紙幣であり、その歴史的な背景とデザインから、現在でも多くの収集家や研究者から注目されています。

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