井上正一

井上正一（いのうえ せいいち）は、嘉永3年2月25日（1850年4月7日）に生まれ、昭和11年（1936年）10月3日に没した、日本の法学者、衆議院議員、そして大審院判事を務めた人物です。

生い立ちと初期の活動

井上正一は、長門国大津郡伊上村（現在の山口県長門市油谷伊上）で生まれました。1866年、四境戦争に際して長州藩の鐘秀隊に加わり、芸州口や石州口を転戦しました。その後、許可を得て隊を離れ、萩明倫館や山口文学寮で学びました。維新後には単身上京し、箕作麟祥のもとでフランス学を修めました。

法学者としてのキャリア

1870年、開成学校に入学。その後、長州藩の貢進生に選ばれ、大学南校を経て、1875年に司法省法学校を卒業しました。同年秋にはフランスへ留学し、法学博士の学位を取得。1881年に帰国すると、司法省に勤務する傍ら、創立間もない明治法律学校（後の明治大学）で教鞭をとりました。旧民法（特に人事編）の起草にも関与し、日本の近代法整備に貢献しました。

政治家・裁判官としての活動

1890年の第1回衆議院議員総選挙では山口2区から出馬し当選を果たしましたが、1891年5月11日に大審院判事に転じ、衆議院議員を辞職しました。同年の大津事件では、児島惟謙大審院長のもとで陪席判事を務めました。その後も大審院部長（1903年～1913年）などの要職を歴任し、明治法律学校の教頭（1890年～1892年、1900年～1904年）も務めました。1912年（明治45年）5月には、大審院判事としての職務懈怠により、大審院懲戒裁判所からけん責の懲戒処分を受けました。

明治大学との関わり

1920年からは明治大学の商議員となり、1936年に亡くなるまで、明治大学の教育と経営に関わり続けました。井上正一は、法学者としてだけでなく、教育者、政治家、裁判官としても幅広い分野で活躍した人物でした。

栄典

1902年（明治35年）4月30日 - 従四位
1907年（明治40年）5月20日 - 正四位

勲章

1897年（明治30年）12月28日 - 勲四等瑞宝章

主な著書

『仏国人事法講』 明法堂、共著、1888年
『刑事訴訟法義解』 明法堂、1891年
『訂正刑事訴訟法義解』 明法堂、1893年
『日本刑法講義』 明法堂、1893年

関連事項

大津事件
明治法律学校

参考文献

花房吉太郎, 山本源太 編『日本博士全伝』,法学博士 井上正一君,博文館,1892.
荻原善太郎 『日本博士全伝』 1888年
木戸照陽 『日本帝国国会議員正伝』 田中宋栄堂、1890年
篠田正作 『明治新立志編』 鍾美堂、1891年
明治大学史資料センター 『明治大学小史―人物編』 学文社、2011年 ISBN 978-4-7620-2217-3
大審院『判事懲戒判決』大蔵省印刷局『官報』1912年6月4日、東京、1912年。

外部リンク

村上一博「大学史ノート井上正一-日本人初の仏国法学博士-」『大学史紀要』八、明治大学大学史料センター、2003年12月、164-166頁

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