井上英之

井上英之：映画監督、その足跡

井上英之は、1947年9月4日に宮城県仙台市で生まれました。彼は映画監督であり、全映連・東宝支部執行委員長も務めています。東宝スタジオに所属し、数々の映画制作に携わってきました。

東宝入社と助監督時代

1969年に東宝へ入社した井上は、数多くの監督の下で助監督として経験を積みました。特に、大森一樹監督との仕事では、『恋する女たち』（1986年）や『ゴジラvsビオランテ』（1989年）などで、その才能を発揮しました。

大森監督との間では、互いに刺激しあい、時に意見をぶつけ合うこともあったようです。井上は、大森監督が現場でカット割りを変更することがあった際、両方のパターンを撮影することを提案したというエピソードも残っています。このことからも、彼の柔軟な姿勢と、作品に対する熱意が伺えます。

『ゴジラvsビオランテ』で撮影助手を務めた清久素延は、大森監督を気さくな人物と評した一方で、井上を「鬼軍曹」のような雰囲気を持っていたと語っています。この証言は、井上の仕事に対する厳しさと、プロフェッショナルとしての責任感を表していると言えるでしょう。

助監督としての主な作品

井上は、様々な監督の作品で助監督を務め、そのキャリアを築いてきました。

監督助手作品
『弾痕』（1969年、監督：森谷司郎）
『野獣の復活』（1969年、監督：山本迪夫）
『娘ざかり』（1969年、監督：松森健）
『栄光への反逆』（1970年、監督：中平康）
『商魂一代 天下の暴れん坊』（1971年、監督：丸山誠治）
『紙芝居昭和史 黄金バットがやって来る』（1972年、監督：石田勝心）
『ゴジラ対メガロ』（1973年、監督：福田純）
『日本侠花伝』（1973年、監督：加藤泰）
『小林多喜二』（1974年、監督：今井正）
『妻と女の間』（1976年、監督：豊田四郎）
『姿三四郎』（1977年、監督：岡本喜八）
『影武者』（1980年、監督：黒澤明）
『連合艦隊』（1981年、監督：松林宗恵）
『嵐を呼ぶ男』（1983年、監督：井上梅次）
『あいつとララバイ』（1983年、監督：井上梅次）
『姉妹坂』（1985年、監督：大林宣彦）

チーフ助監督作品
『沖田総司』（1974年、監督：出目昌伸）
『大空のサムライ』（1976年、監督：丸山誠治）
『白熱』（1977年、監督：石田勝心）
『残照』（1978年、監督：河崎義祐）
『零戦燃ゆ』（1984年、監督：舛田利雄）
『愛・旅立ち』（1985年、監督：舛田利雄）
『宇宙からの帰還』（1985年、監督：中島紘一）
『山下少年物語』（1985年、監督：松林宗恵）
『恋する女たち』（1986年、監督：大森一樹）
『ガンヘッド』（1989年、監督：原田眞人）
『ゴジラvsビオランテ』（1989年、監督：大森一樹）

これらの作品群は、井上が多様なジャンルの映画制作に携わってきたことを示しています。彼は、それぞれの作品で異なる監督のスタイルを学び、自身の演出哲学を形成していったと考えられます。

映画監督としての活動

助監督としての経験を積んだ井上は、1977年に『海・翼・そして明日』で映画監督デビューを果たしました。この作品は自衛隊のPR映画であり、彼の監督としてのキャリアの第一歩となりました。

著書

井上は、映画制作に関する著書も発表しています。

『検証・ゴジラ誕生―昭和29年・東宝撮影所』（朝日ソノラマ、1994年）

この著書では、ゴジラ誕生の舞台裏を詳細に分析しており、映画ファンや研究者にとって貴重な資料となっています。

参考文献

井上英之に関する情報は、以下の書籍でも参照できます。

『ENCYCLOPEDIA OF GODZILLA ゴジラ大百科』（Gakken、1990年）
『ゴジラ 東宝チャンピオンまつり パーフェクション』（KADOKAWA、2014年）
* 『ゴジラVSビオランテ コンプリーション』（ホビージャパン、2015年）

これらの文献は、彼の業績や映画界への貢献をより深く理解するための手助けとなるでしょう。

井上英之は、助監督としての豊富な経験と、映画監督としての独自の視点を持ち合わせた人物です。彼の作品は、日本の映画史における重要な一部を形成しており、今後もその功績は語り継がれていくでしょう。

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