井伊直禔

井伊直禔（いい なおよし）は、江戸時代中期の武士で、近江彦根藩の第11代藩主です。第9代藩主・井伊直惟の次男として、享保12年（1727年）に江戸の彦根藩邸で生まれました。幼少の頃から、青木平左衛門と犬塚十左衛門が附役として仕え、赤坂御門内の彦根藩中屋敷で過ごしました。

叔父にあたる先代藩主・井伊直定は、病気療養を理由に隠居を希望していました。直定には実子の直賢がいましたが、幼少であったため、直禔が養嗣子として迎えられることとなりました。宝暦4年（1754年）6月19日、直定の隠居に伴い、直禔は家督を相続し、彦根藩主となります。

藩主となった直禔は、家中の混乱を深く憂慮し、当時としては珍しく、家臣の意見を丁寧に聞き入れることを重視しました。彼は、法令を遵守し、倹約に努め、武芸や学芸に励むよう家臣に促すとともに、何か問題があれば遠慮なく自分や側近に相談するようにと伝えました。また、政治に誤りがあれば意見を述べ、議論を通じて改善していく姿勢を示しました。これらの考えは、当時の家中に向けた書面にも記録されています。

しかし、藩主就任から間もなく、直禔は急病に倒れてしまいます。彼は、上野館林藩藩主で越智松平家3代目の松平武元を養子に迎えたいと幕府に願い出ましたが、井伊家の血筋を重視する幕府によって却下されました。代わりに、隠居していた先代藩主・直定が再任を命じられるという異例の事態となります。そして、宝暦4年（1754年）8月29日、直禔は病気のため急逝しました。享年28歳という若さでした。

直禔の死後、直定が再び藩主となりましたが、翌年の宝暦5年（1755年）には、直禔の弟である井伊直幸に家督を譲り、再び隠居しました。

経歴

享保12年（1727年）9月8日：誕生
宝暦4年（1754年）6月19日：家督相続、藩主就任
宝暦4年（1754年）8月29日：死去（享年28歳）

系譜

父：井伊直惟（1700年 - 1736年）
母：内藤氏
養父：井伊直定（1700年 - 1760年）
* 正室：酒井忠恭の娘

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