交響曲第4番 (ヴォーン・ウィリアムズ)

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第4番ヘ短調は、1931年から1934年にかけて作曲されました。

作品の背景と特徴

ウィリアムズにとって、この交響曲はそれまでの3つの標題交響曲とは異なり、初めて具体的な物語や情景を持たない純粋な器楽作品となりました。これまでの穏やかさや牧歌的な雰囲気とは大きく異なり、強烈な不協和音と緊迫感に満ちた、厳しく激しい音楽語法が用いられている点が特徴です。この新しい響きは、初演時の聴衆に大きな衝撃と当惑を与えたと伝えられています。作曲家アーノルド・バックスに献呈されています。

初演

作品は1935年4月10日に、エイドリアン・ボールト指揮のBBC交響楽団によって初演されました。

楽器編成

標準的な3管編成を基本としていますが、トランペットは2本で構成されています。以下の楽器が指定されています。

フルート3（うち1人はピッコロ持ち替え）
オーボエ2
コーラングレ（必要に応じて3番オーボエに持ち替え）
クラリネット2
バスクラリネット
ファゴット2
コントラファゴット
ホルン4
トランペット2
トロンボーン3
チューバ
ティンパニ
小太鼓
トライアングル
大太鼓
シンバル
* 弦五部

なお、一部のパート（3番フルート、2番オーボエ、バスクラリネット、コントラファゴット）は省略可能であり、その場合は他の奏者が代わりのパートを演奏するよう指示されています。

楽曲全体の構造

交響曲は全4楽章で構成され、全体の演奏時間は約35分です。この作品の大きな特徴は、全曲を通じて繰り返し現れる二つの主要な動機によって有機的に関連付けられている点です。

1. 基本動機: 半音下降する音程を二つ組み合わせたものです（これはBACH主題を移調し、後半の二音を半音下げた形に基づいています）。
2. 4度上昇による動機: 文字通り、完全4度音程の上昇を基にした動機です。

これらの動機が様々な形で変形・展開され、作品全体の統一感を醸成しています。著名な指揮者・作曲家であるレナード・バーンスタインは、自身のヤング・ピープルズ・コンサートにおいて、この交響曲を構成する重要な要素として短二度音程に焦点を当てた分析を披露しました。

各楽章の解説

第1楽章　アレグロ

ソナタ形式で書かれています。冒頭は不協和音を伴う全合奏による激しい第1主題で始まり、半音階的な動きが特徴的です。ここから基本動機と4度上昇の動機が導き出され、強調されます。続く第2主題はテンポをやや落とし、弦楽器によって情熱的に歌われます。楽章の結尾部では、提示部で騒々しく描かれた主題が、再現部では弱音による神秘的な響きへと変貌し、そのまま静かに消え入るかのように楽章を閉じます。

第2楽章　アンダンテ・モデラート

4度上昇の動機を用いた、管楽器によるどこか不安をはらんだコラール風の序奏で幕を開けます。主要主題は低弦のピチカートを伴ったヴァイオリンの旋律に始まり、次第に声部が増えて複雑なテクスチュアを形成します。序奏のコラールが二度、頂点に到達した後、再現される主題は徐々に落ち着きを取り戻します。終結部では、弱音器をつけたトロンボーンが基本動機を奏でる中、フルートが空虚な印象を与えるカデンツァへと移行し、楽章を締めくくります。

第3楽章 スケルツォ　アレグロ・モルト

A－B－A－B－コーダの構成をとります。A部分の主題は4度上昇動機を含む旋律と、基本動機による応答で成り立っています。B部分はファゴットとチューバに始まる伸びやかなフガートで、ここでも4度上昇動機が中心的な役割を果たします。二度目のB部分は極端に短縮されており、その後コーダへと続きます。コーダでは静かに蠢く低音の上で過去の楽章の旋律が断片的に再現され、さらに基本動機が勢いを増しながら、切れ目なく次の楽章へと接続されます。

第4楽章　アレグロ・モルト

三部形式に、基本動機を展開するフガートによるコーダが続く構造です。主部は開放的な性格の主題で始まり、行進曲のようなリズムに乗って基本動機の変形が現れます。中間部では、第1楽章と第3楽章の終結部の素材が回想されます。コーダは基本動機を主体としたフガートとなり、対旋律として4度動機や主部の主題が登場します。このフガートの頂点に達したところで、第1楽章の冒頭部分が再現され、最後は4度上昇動機に導かれた強烈な不協和音を打ち鳴らして劇的に終結します。

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