交響曲第43番 (ハイドン)

交響曲第43番 変ホ長調 Hob. I:43

フランツ・ヨーゼフ・ハイドンによって作曲された交響曲第43番は、明るい雰囲気が特徴の楽曲であり、愛称『マーキュリー』で広く知られています。この作品は、1771年から1772年頃にかけて創作されたと考えられ、同時期に作られた第44番『悲しみ』とは異なり、より爽やかで軽快な印象を持っています。

概要

この交響曲は、1772年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社のカタログに記載されたことから、1771年前後に完成したと推測されています。第43番の明快な音楽性は、聴衆に喜びを与えることで、楽曲が愛される理由の一つとなっています。

愛称『マーキュリー』の由来

『マーキュリー』という愛称はハイドン自身が名付けたものではなく、初めてその名称が文書に記されたのは1839年にアロイス・フックスが作成した手書きの目録だったとされています。愛称の由来については諸説あり、ジャン・パンは第50番との混同から生じたのではないかと推測しています。第50番の最初の2楽章には、ハイドンが作曲した人形劇『フィレモンとバウキス』の序曲が引用されており、その劇中には「メルクール」（マーキュリー）が登場するためです。

編成

この交響曲は、以下の楽器編成で構成されています：オーボエ2、ホルン2、1stヴァイオリン、2ndヴァイオリン、ヴィオラ、低音（チェロ、ファゴット、コントラバス）。

曲の構成

全4楽章で、演奏時間はおおよそ25分です。各楽章の特徴を見ていきましょう。

第1楽章 アレグロ

この楽章は変ホ長調、4分の3拍子で、ソナタ形式で構成されています。複数回にわたり演奏される長い穏やかな主題がヴァイオリンによって引き立てられます。盛り上がりを見せた後、変ロ長調に転調し、再度主題が演奏されるという展開が魅力的です。

第2楽章 アダージョ

第2楽章は変イ長調、4分の2拍子、ソナタ形式で、主に弱音器をつけたヴァイオリンが主体となります。管楽器は控えめに扱われ、展開は弦楽器のみによって構築されています。和音を変えながら同じ音型が繰り返される様子は、静謐な美しさを表現しています。

第3楽章 メヌエット - トリオ

この楽章は変ホ長調、4分の3拍子で、メヌエット主部とトリオが特徴的です。シンプルな構成ながらも、H.C.ロビンス・ランドンによると「流行歌」のような旋律が耳に残ります。

第4楽章 フィナーレ：アレグロ

最後の楽章は変ホ長調、2分の2拍子で、ソナタ形式を採用しています。穏やかな主題が再び登場し、その後再現部を経てコーダが続くことで、壮大な結末を迎えます。音が一時落ち着いた後に華やかなフィナーレとなる展開は、聴衆に強い印象を与えます。

参考文献

• - 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉、1981年。ISBN 4276220025。
• - 『ハイドン 交響曲集IV（41-49番） OGT 1592』音楽之友社、1982年。

外部リンク

• - 交響曲第43番 変ホ長調 Hob. I:43『マーキュリー』の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト（リンクは仮）

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