京急油壺マリンパーク

京急油壺マリンパーク：半世紀にわたる海の楽園の軌跡

1968年、神奈川県三浦市油壺に開館した京急油壺マリンパークは、京浜急行電鉄によって運営されていた水族館です。約50年間にわたり、多くの来場者を楽しませ、海洋生物の研究にも貢献したこの施設は、2021年9月30日に閉館しました。本稿では、その歴史と魅力を紐解きます。

開館への道のり：夢を叶えるまでの挑戦

京急油壺マリンパークの構想は、京浜急行電鉄の創業70周年記念事業として1967年に始まりました。三浦半島の観光拠点となるユニークな水族館を建設するという壮大な計画です。建設地選定には紆余曲折がありました。当初候補地であった神奈川県立三崎水産高等学校跡地は、県が公園化を計画しており、京急の陳情は難航しました。しかし、魚類学の権威である末廣恭雄東京大学名誉教授の現地調査による太鼓判と、末廣教授を館長に迎えるという条件で、ようやく県から土地の払い下げが承認されました。

開館と革新的な取り組み：自然と共生する水族館

総工費約10億円をかけて建設された水族館は、多種多様な魚類の展示を主眼とする従来の水族館とは一線を画していました。魚類の自然な生態を観察できるよう工夫された展示や、魚類の習性を活かしたショーなど、斬新な試みが導入されました。3万6000平方メートルの敷地には熱帯植物が植えられ、遊園施設も併設されるなど、来場者にとって魅力的な空間が創出されました。

海洋博への貢献と施設拡張：更なる進化

1975年の沖縄国際海洋博覧会のPR活動の一環として、油壺マリンパークでは1973年に「楽しい海洋博」を開催しました。沖縄海洋博と同様の展示内容やイベントで、82万人以上の来場者を集め、大成功を収めました。開館10周年を機に、総工費約20億円を投じて、日本で最初の屋内ショープール館「ファンタジアム」が1981年にオープン。イルカやアシカのショーが人気を呼びました。1986年には大回遊水槽のリニューアル、1993年には磯の生物水槽の新設など、施設の充実を図り続けました。

海洋深層水事業と新たな試み：多角的な展開

2001年には、海洋深層水の利用を目的とした子会社「三浦DSW」を設立しました。しかし、採算性の問題や設備の老朽化により、2008年に事業を終了しました。その後、海洋深層水展示施設「D. S. Wonder」は閉鎖され、「みうら自然館」としてリニューアルオープン。また、三浦DSW跡地には2010年に「かわうその森」が開設されました。

研究機関としての貢献：学術的な側面

京急油壺マリンパークは、水族館としての役割に加え、研究機関としての側面も持っていました。メガマウスザメやダイオウイカの学術解剖を行うなど、海洋生物学に貢献しました。東京大学三崎臨海実験所との共同研究なども行い、地域の生物多様性保全にも力を注ぎました。

閉館：時代の変化と老朽化

近年、競合する大型水族館の増加や来場者数の減少、建物の老朽化などの問題を抱えるようになりました。そのため、2021年9月に閉館という決断に至りました。約400種類4000匹の生き物は他の施設へ譲渡されました。

閉館後の展開：跡地再開発とデジタルアーカイブ

閉館後、跡地は再開発計画が進められています。一時的に「京急油壺温泉キャンプパーク」が運営されましたが、2024年3月に閉鎖されました。また、バーチャル空間上に水族館を再現するVRプロジェクトも実施されました。

まとめ：地域に愛された水族館

京急油壺マリンパークは、半世紀にわたり多くの人々に愛された水族館でした。その歴史と功績は、地域社会に深く刻まれています。再開発計画によって、新たな姿で生まれ変わることを期待したいです。

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