京職

京職（きょうしき）について

京職とは、日本の古代の律令制において、平安京内での司法、行政、警察業務を統括する重要な機関でした。京職は、古訓では「みさとづかさ」とも呼ばれ、唐名にも「京兆府」「馮翊」「扶風」などが存在します。また、江戸時代において京都に設置された所司代も、「京職」と呼ばれることがありました。

組織構造と職掌

京職の組織は、京内を東西に分ける形で「左京職」と「右京職」が設置され、それぞれが独立した行政機関として機能していました。左京職の長官は「左京大夫」、右京職の長官は「右京大夫」と呼ばれ、平安京では姉小路の北、朱雀大路にそれぞれの役所が位置していました。

平安京は、碁盤目状に整備された都市であり、その中心には天皇の居所である内裏と中央官庁街が存在していました。これは、中国の都城制度を参考にしたもので、天皇の玉座が南を向く考え方に従い、位置的に左側を「左京」、右側を「右京」としていました。

京職の職掌と権限

京職は、京域に関連する司法、行政、警察を統括する役割を果たしました。日本書紀にも初めてその存在が言及されており、地方の国司に相当する業務を扱っていますが、京は国家運営のために作られた人工都市のため、他の国司とはその性格が大きく異なりました。

例えば、日常生活における戸籍に関する業務は、国司が外部の官職であったのに対し、京職は中央官庁としての役割を持っていました。最初は、京戸の貫付は政府の権限で実施され、国司のドラマに関わる逃亡や死亡による除帳も、京職ではなく政府が管理していましたが、貞観18年（876年）には京職に除帳の権限が与えられました。

社会的役割と変遷

京職には、左右二職があり、それぞれが地域を統治していました。市司という被官が存在し、左京職は東市司、右京職は西市司をそれぞれ管轄し、市場関連の業務を行いました。行政事務の運営を補佐するために、坊令や坊長と呼ばれる職も設けられ、地域の統治が末端にまで及びます。

しかし、平安京への遷都後は、貴族層の京への定住が進み、坊令の命令に従わない者が増え、問題が顕在化しました。これを受けて、貞観4年には坊令の代わりに保長という新たな地域責任者が設置され、貴族や官人がこれを務めることになりました。中期にはこの制度も機能しなくなり、有力者を保刀禰に任じる形で当初の業務が継続されました。

比較と戦国・江戸時代の変化

京職は特に日本独自の制度であり、唐の長安とは異なる形態を持っていました。長安の都市制度においては、坊と里が別々に設けられ、それぞれに役人が配置されていましたが、日本の京ではそのような制度が見られませんでした。

戦国時代に入ると、官位が売られるようになり、地方の大名たちが官位を求めるようになります。左京大夫の地位は特に人気があり、数多くの戦国大名が名乗るようになりました。また、江戸時代には、特定の武家が京職の官位を代々世襲し、左京大夫や右京大夫としての地位を保持しました。

まとめ

京職は平安京の運営において重要な役割を担い、日本の古代社会の司法や行政の実情を左右する存在でした。その役割は時代とともに変遷しましたが、京の秩序を維持するための重要な機関として機能し続けました。

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