京都将棋

京都将棋：裏表で変わる駒、先手必勝の謎

京都将棋は、1976年に田宮克哉氏によって発表された、比較的新しい将棋の一種です。別名「京都銀閣将棋」や「京都銀閣金鶏秘譜将棋」とも呼ばれます。その名の由来は、香車の裏がと金になることから、香と「京都」の読みが同じであることにちなむとされています。

独特のルール：裏返す駒

京都将棋は、標準的な将棋とは異なるいくつかの特徴を持っています。

コンパクトな盤面: 縦横5マスの小さな盤面を使用します。自陣と敵陣の区別はありません。
5種類の駒: 玉、香と（表は香車、裏はと金）、銀角（表は銀、裏は角行）、金桂（表は金将、裏は桂馬）、飛歩（表は飛車、裏は歩兵）の5種類の駒を使用します。駒の動きは通常の将棋と同じです。
駒の裏表: 玉以外の駒は、1手動かすごとに必ず裏返ります。これは、将棋における不成とは異なり、必ず裏返さなければならない点が重要です。そのため、駒の能力は一手ごとに変化します。
取った駒の使用: 取った駒は、表裏どちらの面でも使用できます。
ルール違反なし: 二歩、行き所のない駒、打ち歩詰めといった、通常の将棋ではルール違反となる状況も、京都将棋では禁止されていません。これは、持ち駒を表裏どちらでも使えるため、打ち歩詰めを禁止しても実質的な意味を持たないためです。
千日手: 本将棋と同様に、同一局面が4回繰り返された場合、千日手となり引き分けとなります。連続王手の千日手も引き分けです。

先手必勝の証明

電気通信大学大学院の塩田雅弘氏と伊藤毅志氏は、2021年に「京都将棋の弱解決」という論文を発表し、先手必勝であることを証明しました。彼らは、メモリ32GBのAMD Ryzen 9 5950Xを用いて約11時間の計算を行い、先手が初手1四歩成とした場合、先手がミスをしない限り必勝となることを明らかにしました。

ただし、これはすべての局面を網羅した「強解決」ではなく、「弱解決」です。全ての局面における勝敗と手順が解明されたわけではなく、先手の初手1四歩成が最善手であるという証明もされていません。それでも、先手必勝であることを証明するには十分な結果と言えます。

京都将棋の魅力

京都将棋は、そのコンパクトな盤面と、駒の裏表による変化に富んだゲーム性から、初心者にも手軽に楽しめる一方で、奥深い戦略性を秘めたゲームです。先手必勝という意外な性質も、戦略研究の余地を残しており、将棋愛好家だけでなく、ゲーム理論の研究者にとっても興味深い対象となっています。 盤面の小ささから、局面の数は通常の将棋に比べて遥かに少なく、コンピュータによる解析が比較的容易である点も特徴的です。

まとめ

京都将棋は、既存の将棋の枠にとらわれない、ユニークなルールを持つボードゲームです。そのシンプルさと奥深さ、そして先手必勝という意外性から、幅広い層に魅力を提供するゲームと言えるでしょう。 今後の研究によって、最善手順やより高度な戦略が解明されることで、さらに多くのプレイヤーを魅了する可能性を秘めています。

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