行き所のない駒

行き所のない駒：将棋の禁じ手

将棋において、終局時まで自駒を一切動かせない状態に陥る手を禁じているルールがあります。それが「行き所のない駒」です。これは将棋の禁じ手で、反則負けとなります。

ルールの概要

敵陣の一段目に歩兵や香車、一・二段目に桂馬を成らずに動かす（進める、打つ）ことは反則負けとなります。これらの駒を該当地点に移動する場合は、必ず成る必要があります。このルールは、二代大橋宗古によって考案されたとされています。

例えば、敵陣の一段目に歩、二段目に香車と桂馬を成らずに配置した場合、それらの駒は相手がとって持ち駒にしない限り、一切動かすことができません。このような状態の駒を「行き所のない駒」または「死に駒」と呼びます。

「行き所のない駒」を作る行為は禁じ手ですが、今後の指し方次第で動かすことができる可能性がある場合は、禁じ手とはみなされません。例えば、ある駒が現在動かせなくても、他の駒を動かすことで、その駒が動けるようになる場合です。

プロの公式戦においては、行き所のない駒を実際に作って反則負けになった事例は、2022年現在確認されていません。

詰将棋における行き所のない駒

詰将棋でも、将棋の基本ルールに準拠するため、「行き所のない駒」を作る手は認められません。

攻め方の手番では、行き所のない駒は王手をかけることができないため、そのような着手はほとんどありません（例外的に、他の駒による王手と組み合わせた「開き王手」の場合のみ考えられますが、それでも禁じ手となります）。

一方、玉方の手番では、合駒の制限という形で、このルールが重要になる場合があります。例えば、玉方の持ち駒が限られている状況で、攻め方の駒によって玉方の駒の動きが制限され、行き所のない駒を作ってしまうような局面が考えられます。このような状況は、複雑な詰将棋、特に「スーパー詰将棋」などで見られる場合があります。

合駒の制限を利用した詰将棋の問題例としては、後手が桂馬を打てない状況で歩の合駒を強要する問題や、複数の合駒を発生させるために強力な駒を合駒させる問題などが挙げられます。また、合駒が絡まない問題でも、「行き所のない駒」の概念を用いた技巧的な詰将棋作品が存在します。

その他の将棋類

チェス、シャンチー、チャンギなど、他の将棋類では、「行き所のない駒」という概念は必ずしも存在しません。チェスのポーンは最前列に到達すると「プロモーション」により他の駒に変化し、シャンチーやチャンギの卒は敵陣に入ると移動方法が変化します。

ただし、大大将棋や摩訶大大将棋、泰将棋など、特殊なルールを持つ将棋類では、成ることができない駒や、敵駒を取らない限り成ることができない駒が存在するため、「行き所のない駒」が発生する可能性があります。

まとめ

「行き所のない駒」は、将棋における独特の禁じ手であり、そのルールは将棋の戦略や戦術に影響を与えます。詰将棋においても、このルールは重要な役割を果たし、複雑で高度な詰将棋問題の創作に利用されています。他の将棋類との比較を通して、「行き所のない駒」という概念が将棋特有のものであることがわかります。

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