他田部氏

他田部氏について

他田部氏（おさたべし）は、日本の古代氏族の一つです。その起源は、6世紀後半頃に敏達天皇が宮を置いたとされる「他田幸玉宮（おさたのさきたまのみや）」に遡ると考えられています。この宮は「他田宮」とも呼ばれ、敏達天皇自身も「他田天皇」と称されることがありました。他田部氏は、この他田宮に属し、その所領の管理や雑務に従事した人々を指すとされています。

他田部の役割

各地から発見されている木簡には「他田部舎人」という記述が見られ、これは地方から他田宮に出仕し、皇居の警護や雑用などを担っていた人々と考えられています。つまり、他田部氏は単なる所領管理者ではなく、天皇に直接奉仕する人々でもあったのです。

他の氏族とのつながり

他田部氏と同族と考えられる氏族には、他田氏、丹田氏、長田氏、多田氏、田幸氏などが挙げられます。これらの氏族は、共通の祖先を持つか、何らかの歴史的なつながりがあったと考えられます。

奈良時代から平安時代にかけて

正倉院文書には、下総国海上郡出身の官人である他田日奉神護の名前が見えます。また、平安時代初期には、信濃国や駿河国に多く分布し、特に信濃国では、伊那、諏訪、筑摩、水内、埴科、小県の各郡で郡司を務めるなど、郡司層として活躍した記録が残っています。

貞観4年（862年）には、信濃国小県郡権少領の他田舎人藤雄と共に、信濃国大領の金刺舎人正長が外従五位下を授けられました。また、貞観6年（864年）には、右近衛将監の長田（他田）直利世が外従五位下を授かり、その3年後には下野介に任ぜられています。しかし、その後、他田部氏は勢力を弱め、諏訪社の神官など、特定の地域や職域に活動範囲を狭めていったようです。

万葉集と日本霊異記

万葉集には、律令制のもとで新設された新国造として、小県郡の他田舎人大嶋の名前が記されています。また、『日本霊異記』には、小県郡跡目里人の他田舎人蝦夷による私出挙の話が収録されており、他田部氏が古代社会の中で果たしていた役割を垣間見ることができます。

まとめ

他田部氏は、敏達天皇の宮に由来する古代氏族であり、その所領管理や警護を担っていました。奈良時代から平安時代にかけては、信濃国を中心に郡司として活躍しましたが、その後、勢力を弱め、活動範囲を狭めていきました。しかし、万葉集や日本霊異記などの文献にその名が残されており、古代史を研究する上で重要な氏族の一つであるといえるでしょう。

関連項目

科野国造
珠流河国造
* 下海上国造

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