代官坂

代官坂（だいかんざか）

概要

代官坂は、神奈川県横浜市中区の元町から山手町へと続く坂道です。元町商店街から南へ向かい、いくつかの細い道に分かれながら、丘の上の山手本通りへと続いています。山手本通りと交差した後、横浜市立元街小学校の前を通り、本牧通りに接続します。

地理

代官坂は、谷戸坂や汐汲坂と同様に、元町と山手を結ぶ重要な坂の一つです。坂の下の元町商店街から上っていくと、道はY字状に分かれ、それぞれが山手本通りに繋がります。山手本通りとの交差点より先は、元街小学校の前を通り、本牧通りへと続いています。かつて、元町から山手を越えて上野町方面へ降りる道全体を箕輪坂と呼んでいましたが、現在では山手本通りの南側部分のみが箕輪坂と呼ばれています。

代官坂の中腹には、元街小学校方面へ抜けるトンネル（代官隧道）があり、このトンネルは一車線で、信号による交互通行となっています。トンネルの近くには、1946年創業のダンスホール「クリフサイド」が建っています。

坂の途中には、1873年創業の老舗である宮崎生花店があります。この花屋は関東大震災後に建て直され、スタジオジブリ制作の映画「コクリコ坂から」にも登場しました。坂の下には、「日本バプテスト発祥の地」の碑が設置されています。

歴史

古くは、元町から山手を越え、上野町方面に至る道全体が「箕輪坂」と呼ばれていました。箕の形のように丸く窪んだ地形を表している、または北方村の地主である箕輪家に由来するとも言われていますが、詳細は不明です。新編武蔵風土記稿には記述が見られないため、正確な起源は分かっていません。1884年から1899年まで、この付近一帯には「三ノ輪坂」という町名が用いられていました。

この坂は、オランダ人実業家ノールトフーク・ヘフトの名にちなんで「ヘフト坂」とも呼ばれ、それが転じて「ヘクト坂」「ヘキ坂」とも呼ばれることもありました。ヘフトは、西洋劇場「ゲーテ座」（現在の岩崎博物館の場所）を創設したり、ビール醸造を行ったりした人物です。

「代官坂」という名前が使われ始めたのは、明治20～30年代頃と推測されています。坂の途中に屋敷を構えていた石川徳右衛門に由来するとされています。徳右衛門は惣年寄を勤めていましたが、代官ではありませんでした。開港時に旗本知行地が神奈川奉行所に預けられたため、この地域には代官の役職は存在しませんでした。徳右衛門は1854年のペリー来航時に応対し、その後も横浜の町政を担った有力者であったため、代官に相当する人物とみなされたと考えられていますが、確かな理由はわかっていません。明治時代には、「箕輪坂」と「代官坂」の名称が併用されていた時期があったとされています。

1932年には、横浜市の失業救済事業の一環として、代官隧道が開通しました。

付近の施設

クリフサイド：1946年創業のダンスホール。代官坂トンネルの近くにあります。
宮崎生花店：1873年創業の老舗花屋。関東大震災後に建て直され、映画「コクリコ坂から」にも登場しました。
日本バプテスト発祥の地碑：代官坂の下に設置されています。
代官隧道：1932年に開通したトンネル。

参考資料

『角川日本地名大辞典 14 神奈川県』角川書店、1984年6月8日、540-541頁。
小寺篤『横浜の坂』経済地図社、1976年1月15日、34-39頁。
* 『県別マップル14 神奈川県道路地図』昭文社、2016年、6,18頁。ISBN 978-4-398-62683-7。

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