惣年寄

惣年寄（そうとしより）とは

惣年寄は、江戸時代に大坂や岡山、高知、堺、今井、平野、小倉、鹿児島などの都市で、町政を司った役人の筆頭です。総年寄とも呼ばれ、江戸の町年寄に相当する役職ですが、大坂では町年寄の上に位置し、町政運営の中核を担いました。

大坂における惣年寄

惣年寄の成立

17世紀中頃までに、大坂三郷（北組・南組・天満組）の行政を担うため、町人の中から選ばれた三郷惣年寄が設置されました。その下には町年寄がおり、大坂城代、大坂町奉行、惣年寄、町年寄、そして町民という統治体制が確立しました。

惣年寄の起源は、1615年（元和元年）に松平忠明が大坂城主だった時代に、天満地子銀取立役から任命された元締衆に遡ります。1619年（元和5年）に大坂町奉行が設置された際、元締衆は惣年寄と改称され、各町の有力者が町年寄に任命されました。惣年寄は、大坂の開発に携わった町人が多く、世襲制でした。当初は北組10人、南組6人、天満組5人でしたが、時代によって変動し、3組合わせて10〜20人程度でした。

惣年寄は名誉職で給料はなかったものの、公役や町役が免除され、年頭や八朔の礼銭、祝儀を受け取りました。公役とは、惣会所の経費や消防費などの負担、町役とは、町会所の費用や橋の普請費用などの町の運営費負担のことです。

元締衆は、1616年（元和2年）に大坂城下で人望のある富豪が選ばれ、城下町の区画整理や水帳の作成、地子の徴収を行ったのが始まりです。水帳には、土地の面積や所有者、町の繁栄度などが記録され、等級分けが行われました。

惣年寄の職務

大坂三郷の町政は、惣年寄が実務を担い、各町の町政は惣年寄に属する町年寄が行いました。主な職務は以下の通りです。

町奉行からの触書・口達の伝達
町奉行所への出仕と郷内の事項の上申
諸役徴収、地子銀・地代銀・運上銀の上納
町年寄、町惣代、船惣代の任免と監督
火消人足の指揮
公事訴訟の調査上申
宗旨人別改めの管理
諸職仲間の人別調査
酒造米の調査
将軍来訪時の町の清掃、警備、町宿の選定

惣年寄は惣会所に詰め、月番で勤務し、自治的な行政を行いました。惣年寄の補佐として、惣代、手代、物書、会所守などが置かれ、これらの人々の給料は町々の負担でした。

町代と惣代

町代は、町の費用で雇われた髪結出身の者で、町人が大坂町奉行所に提出する願書を代書する役割を担いました。その後、町代は訴訟や下役の手伝いも行うようになり、各町の町代が惣町人惣代として御用を務めました。さらに、大坂町奉行所に精通した惣代が雇われ、惣年寄を助けて組の事務に専従しました。

時鐘の鋳造

1634年（寛永11年）、3代将軍徳川家光が上洛した際、大坂・堺・奈良の地子免除が布告されました。惣年寄らは、地子免除に感謝し、時鐘を鋳造することを決め、銀80貫目の助成を得て鐘を鋳造、高麗橋矢倉筋に釣鐘屋敷を建設しました。

明治維新後

1869年（明治2年）、大坂三郷は東南西北の4つの大組に改組され、惣年寄は廃止されました。各大組には大年寄が、町組には中年寄が設けられました。

平野の惣年寄

摂津国住吉郡平野郷では、平安時代後期に大念仏寺が開基され、門前町が形成されました。室町時代から戦国時代には、平野七名家が自治を行いました。1702年（元禄15年）に平野郷町が成立し、惣会所が設置され、5人の惣年寄が置かれました。

堺の惣年寄

堺は、大坂の陣で焼失後、再編され、元禄6年（1693年）には南北二組制となりました。北組、南組にそれぞれ惣会所が設置され、それぞれ6名（後に5名）と5名の惣年寄が月番で勤務しました。

今井の惣年寄

今井町は、もともと興福寺領でしたが、一向宗の布教拠点として発展しました。1621年（元和7年）に松平下総守忠明が巡見し、惣年寄を置いて行政権と司法権を与えました。惣年寄は名誉職で世襲制でした。

岡山の惣年寄

岡山の惣年寄は定員3名で、岡山藩の評定所において任命されました。士分待遇で、地子・町役を免除され、苗字帯刀を許されました。

高知の惣年寄

高知の惣年寄は門閥・資産・徳望のある町人の中から選ばれ、世襲制でした。播磨屋、平野屋、櫃屋、辰巳屋、土種屋の5家から2-3名が選ばれました。

小倉の惣年寄

小倉藩では、東西の曲輪に大年寄を配置し、その上に総年寄を置いて町内の諸事を処理させました。士分格の待遇を受け、役料と粮米が与えられました。

鹿児島の惣年寄

鹿児島では、城下の町方は町奉行が支配し、その下に惣年寄、年寄などがいて、町政を行いました。

まとめ

惣年寄は、江戸時代の各都市において、町政の中核を担った重要な役職でした。地域によって制度や職務内容は異なりましたが、いずれも町人による自治的な運営を支え、それぞれの都市の発展に貢献しました。その存在は、当時の町人文化を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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