箕

箕（み）について

箕は穀物の選別や運搬、乾燥などに広く用いられる民具です。特に米などの選別においては、殻や塵を除去するために使われます。機械に対して手作業で行うため、一般的には「手箕（てみ）」とも呼ばれます。英語では「winnowing basket」と称されるこの器具は、農業生活において非常に重要な役割を果たしています。

箕の概要

箕は、主に竹や樹皮などの自然素材を編んで作られます。脱穀の後にお米から実と殻を分ける作業は「簸（ひ）る」と称され、風を起こすことで穀物を選別する「風選（ふうせん）」という技法が一般的です。箕には穀物の選別以外にも、運搬や茶の選別、さらには土砂の運び出しなど、様々な用途に応じた形式があります。例えば、茶箕や雑箕などがその代表例です。

また、箕の形状は地域によって異なることがあり、例えば奄美地方では円形の箕（丸箕）が多く見られる一方、日本のほとんどの地域では片方が開いた片口箕が一般的です。民俗学者の下野敏見は、トカラ列島を境に韓半島文化圏や大和文化圏の片口箕、琉球文化圏や台湾文化圏の丸箕を定義しましたが、これに関してはさらなる研究が求められています。

地域に見る箕の特徴

U字形の片口箕で特に両端を内側に折り込むタイプのものは、日本の鹿児島以北に加え、ブータンの某地域にも見受けられます。一方、南アジアのベトナム北部モッポウ村では網代編みの形式が使われており、ラオスではタイダム族が独自の形状の箕を用いています。こうした地域ごとの特徴は、各文化が箕をどのように利用し、発展させてきたかを物語っています。

日本における箕の素材と文化

日本での箕の製作には、藤や竹、サクラなどの素材が使われています。たとえば、竹アジロ箕は斜めに糸状の竹を編み込む技法で作られており、徳島の阿波箕や奈良の国中箕などがその一例として挙げられます。また藤箕は、竹とヤマフジの素材を組み合わせて作られ、千葉県の木積地区の藤箕は重要無形文化財に指定されています。さらに、アイヌの人々が伝統的に使用していた「ムイ」は、シナノキやカツラを素材にして形成したことが特徴です。

北部九州では楕円形の箕を「そうけ」と呼び、片口のものは「えびそうけ」として知られています。箕の製作には高い技術が必要であり、特に熟練した職人によって作られるため、全国各地で箕作（みつくり）や箕直（みなおし）が行われていました。

箕にまつわる習俗

箕乳（みつきより）の習俗も存在し、長野県佐久地域では幼児の成長を祝う行事があります。この際、箕の中に幼児を入れ、特定の歌を歌いながら揺すって邪気を払う風習があり、地域の文化を反映したものとなっています。また、箕宿は中国の天文学において二十八宿のひとつにあたります。

他の風選用具

文化圏によっては、箕以外の道具が使用されることもあります。たとえばイランでは、風選にフォーク状の器具が利用されています。このように、箕は日本の農業文化の一部として重要ですが、各地域の風習や道具の多様性が存在することも注目すべき点です。

箕は単なる器具でなく、その背後には歴史的な背景や地域の文化が詰まっています。

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