島津元久

島津元久（しまづ もとひさ）

島津元久は、南北朝時代から室町時代にかけての武将であり、守護大名として活躍しました。大隅・日向・薩摩の守護を歴任し、島津氏の勢力拡大に大きく貢献しました。彼は島津氏第7代当主であり、奥州家第2代当主でもありました。父は島津氏6代当主の島津氏久、母は伊集院忠国の娘です。

奥州家継承と薩摩守護職

1387年、父の死により奥州家を継承しました。1393年には、従兄である総州家当主の島津伊久・守久父子の仲介役を務めたことで、伊久から薩摩守護職と島津氏の家宝、さらに領地の川辺郡を譲り受けました。この結果、元久は薩摩における影響力を確立しました。

日向庄内支配と相良氏との対立

日向庄内の支配を巡り、相良前頼と対立しました。1394年には相良前頼と連携した九州探題今川了俊の四男である尾崎貞兼に北郷久秀を討たれるも、前頼の戦死と了俊の九州探題解任により、庄内の支配を確固たるものとしました。

両島津家の協力と対立

当初、元久は総州家と協力し、了俊に協力していた入来院氏ら渋谷五氏を平定しました。また、1397年には伊久の次男・忠朝と元久の異母弟・久豊が、肥前国で新しい九州探題である渋川満頼と会談し関係改善を図るなど、両家は協調関係を維持していました。

しかし、1400年に元久は養子としていた伊久の三男である久照と、伊久一族の夫人を突然離縁し、薩摩に清水城を築いたことから、総州家との関係が悪化しました。これは、久照もしくは夫人所生の子が奥州家を継いだ場合、奥州家が総州家の影響下に入ることを恐れたためと解釈されています。

伊集院氏の影響と家督争い

新名一仁は、元々奥州家の家督を継ぐべきであった元久の嫡男（後の仲翁守邦）が1395年に出家させられ、元久の母方の叔父である石屋真梁の門弟とされ、後に修行名目で関東に送られた点を指摘しています。また、その後継者として伊集院家出身の初犬千代丸（煕久）が擁立されたことから、伊集院氏による工作があった可能性を示唆しています。

鶴田合戦と薩摩半島掌握

1401年、渋谷五氏のうち鶴田氏を除く四氏が伊久に味方したため、奥州家と総州家は絶縁状態となりました。同年の鶴田合戦で元久側が敗れると、鶴田氏とともに菱刈へ逃亡しましたが、伊集院頼久や伊作久義の支援により薩摩半島を掌握しました。また、樺山氏や新納氏も日向進出を認めてもらう代わりに元久を支援しました。

一方、異母弟である久豊は、樺山氏や新納氏と敵対する伊東祐安の娘と婚姻を結んだことに元久が反対したため、兄弟の関係は冷却化しました。

幕府の調停と両家の和睦

肥後の相良氏と幕府は伊久側につきましたが、勘合貿易への影響を恐れて、1404年に幕府の調停により両家は和睦しました。同年6月29日、元久は大隅・日向守護となりました。1407年に総州家の伊久が亡くなると、忠久は島津忠朝の平佐城を奪い、同時期に伊集院頼久も総州家の支配下にあった坊津・泊津を奪いました。1409年9月10日には薩摩守護も務めるようになり、翌年、元久は自派の一門・家臣を率いて上洛し、将軍足利義持に拝謁しました。この際、日向にいた久豊と会談し和睦しています。

領内支配と貿易の推進

その後も元久は、領内の国人を被官化することで支配力を強化し、明や李氏朝鮮、琉球との貿易を盛んに行いました。また、福昌寺や鹿児島神社の社殿建立にも尽力しました。

病没と後継者争い

1411年、出陣中に病没しました。1379年生まれの息子である仲翁守邦は出家し、福昌寺の3代目住持となったため、弟の久豊と甥の伊集院煕久の間で後継者争いが起こりました。奥州家が勝利したことで、本拠地は大隅から鹿児島に移り、鹿児島が島津氏の城下町として発展していくことになります。

まとめ

島津元久は、室町時代初期における島津氏の勢力拡大に大きく貢献した人物です。奥州家を継承し、薩摩、大隅、日向の守護を歴任し、領内の支配を強化するとともに、海外との貿易を積極的に展開しました。その生涯は、島津氏の発展を語る上で欠かせないものとなっています。

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