伊勢電気鉄道デハ121形電車

伊勢電気鉄道デハ121形電車は、1926年に伊勢電気鉄道（後の近畿日本鉄道）が導入した制御電動車です。四日市と津を結ぶ伊勢鉄道が、電化に合わせてデハニ101形と共に製造しました。

導入の背景

伊勢鉄道は、1915年に部分開業した後、1924年に津 - 四日市間を開業しました。しかし、自動車や省線との競争により利用者が激減。そこで、高頻度・高速運転を実現するため電化を計画し、1926年12月に完成しました。この電化に合わせて導入されたのがデハ121形です。

車両構成

デハ121形は、以下の2両で構成されています。

デハ121：制御電動車
デハ122：制御電動車

製造は日本車輌製造が担当しました。

車体

本形式は、同時期に製造された愛知電気鉄道電7形と全く同一の車体構造を持つことが特徴です。半鋼製の車体は、全長16,888 mm、全幅2,641 mm、全高4,167 mm。両運転台式で、運転台は車端部の右側に設置されています。側面の窓配置はd2D10D3で、乗務員扉は車掌台側にのみ設置されていました。客室中央部には固定クロスシートが24名分、前後の扉付近にはロングシートが設けられています。

登場時の塗装はデハニ101形と同様にあずき色でしたが、関西急行鉄道への合併後に緑色へ変更。その後、1959年頃からは近鉄マルーンとなりました。

主要機器

主要機器はデハニ101形と同様で、主電動機はK7-653A（48 kW）を4基搭載し、吊り掛け式で装架。制御器はHL形、ブレーキは非常直通ブレーキを採用しています。台車は日車D形です。

改造と改番

伊勢電気鉄道を合併した参宮急行電鉄は、1941年に関西急行鉄道に改組。この際、デハ121形はモ5121形に改番されました。

* デハ121形デハ121 - 122 → モ5121形モ5121 - 5122

1943年には、座席が全てロングシートに改造されました。また、時期は不明ながら、制御器がABN形に、ブレーキがA動作弁の自動空気ブレーキに交換され、手動扉から自動扉への改造も行われました。

1960年には更新修繕が実施され、ウインドウシル・ヘッダーの除去、屋根上の歩み板撤去、雨樋の設置、運転台側への乗務員室扉設置などが行われました。妻面や戸袋窓、2段窓の上段にはHゴムが採用され、いわゆるバス窓となりました。

運用と廃車

デハ121形は、当初から各駅停車や区間運転用として伊勢電気鉄道本線で使用され、その後は養老線や伊勢線を中心にク5421形などと2両編成を組んで運用されました。1959年の名古屋線改軌直前には、クニ5421形やモ6241形モ6241と編成を組み、神戸線（現・鈴鹿線）でも使用されました。名古屋線の改軌対象外となったため、同じく対象外となったモ5111形やク5411形と共に伊勢線で使用され、伊勢線の廃止後は養老線に転属。1970年11月にモ5121が、1971年2月にモ5122が廃車となり、形式消滅しました。

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