伊吉博徳

伊吉 博徳（いき の はかとこ）の生涯と業績

伊吉博徳は、飛鳥時代から奈良時代にかけての日本の官人として知られています。彼の氏は伊岐または壱伎と記され、名は博得とも呼ばれることがあります。彼の姓は最初は史でしたが、後に連に改姓しました。『日本書紀』に彼の名が挙げられているため、歴史的な記録の中でも特に重要な人物の一人とされています。

出自と背景

伊吉博徳は、中国から渡来した氏族の末裔であり、周の第11代王である宣王の子孫とされています。彼は長安出身であり、壬申の乱の際には近江朝廷、大友皇子側での活躍があった壱伎韓国と同族であったと考えられています。このような背景から、当時の政治や文化において重要な役割を果たしていました。

経歴

伊吉は斉明朝において第4次遣唐使の使節として任命されました。彼は斉明天皇5年（659年）7月に出航し、数々の試練を経て唐の高宗に謁見します。この際、伊吉は陸奥の蝦夷に関する情報を唐の皇帝に伝えました。蝦夷に関する貴重な記録は彼の使節団によって残され、当時の生活様式について貴重な知見を提供しています。

しかし、その後、当時の複雑な政治状況も影響し、使節団は幽閉される事態に陥ります。斉明天皇6年（660年）に百済が滅亡し使節は解放されますが、彼らの経験と目撃した情景は、その後の歴史に多大な影響を与えました。特に博徳は百済の滅亡を目の当たりにし、国家が経験する苦悩を実感したことでしょう。

帰国後の彼は、唐との関係を重要視し続け、天智天皇6年（667年）に再度唐からの遣使を受け入れる際にも応接にあたりました。以後、彼は数回にわたり唐からの使者を迎え入れる役割を果たし、文化的な交流の一環として日本と唐の架け橋となりました。

『伊吉博徳書』について

彼の業績を称える文書『伊吉博徳書』は、彼が第4次遣唐使として任命された際の紀行記録です。この書は、彼の使節活動について詳しく記述されており、日本の古代を知るための貴重な資料とされています。特に、引用された場面では「天皇」という用語や「倭」などの国名に関する表記が見られ、当時の日本の国際的な位置づけを考察する上で不可欠な文献となっています。

この書は天武天皇12年（683年）前後、または持統天皇4年（690年）から9年（695年）に成立したと考えられています。『日本書紀』にも数回引用されており、古代日本の歴史的証言としての重要性を持っています。特に日本と中国との関係を窺い知ることができる文書であり、博徳の精緻な観察力が光ります。

官歴と評価

伊吉博徳の官歴は多岐にわたり、天智天皇6年（667年）の唐使送迎から始まり、天武天皇12年（683年）には姓を改めるなど、彼の官人としての歩みは一貫していました。持統天皇9年（695年）には遣新羅使の副使にも任命され、政界でも重きをなしていました。

彼の業績や行動は、当時の政治を直に影響し、その後の日本とアジア大陸との関係において重要な役割を果たしました。伊吉博徳は歴史の中で、その名を刻むこととなり、古代日本の国家形成に寄与した数少ない官人の一人とされています。

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