伊東祐時

伊東祐時（いとうすけとき）は、鎌倉時代前期に活躍した武将であり、日向伊東氏の始祖としてその名を歴史に刻んでいます。幼名は犬房丸といい、数奇な運命を辿りました。

建久4年（1193年）5月28日、父である工藤祐経が曾我兄弟によって討たれるという悲劇に見舞われます。父の仇である曾我時致は、助命の動きもありましたが、幼い犬房丸（後の祐時）が、その処刑を強く訴えたと伝えられています。その結果、時致は祐経の一族に引き渡され、処刑されることとなりました。この事件は、祐時の人生に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

その後、祐時は幕府の御家人として仕え、数々の重要な役割を担いました。承久3年（1221年）6月に勃発した承久の乱では、幕府方の東海道軍に加わり、武将としての才能を発揮しました。また、安貞元年（1227年）には、御所内裏が焼失した際に、将軍の使者として上洛するという大役も務めました。

嘉禎元年（1235年）には、従五位上検非違使左衛門尉、大和守に任じられ、その官位の高さからも、幕府からの信頼の厚さが窺えます。建長4年（1252年）、68歳でその生涯を閉じました。

妻は土肥遠平の娘であり、妻の母親は伊東祐親の娘であったとされています。また、所領の一つであった愛知県の設楽地域には、伊豆から伊東祐親に関係する一族を呼び寄せ、所領を分け与えたという伝承が残されています。これは、祐時が単なる武将としてだけでなく、一族の繁栄にも尽力したことを示唆するエピソードと言えるでしょう。

祐時の生涯は、激動の時代を生き抜いた武将の姿を鮮やかに描き出しています。幼い頃の悲劇を乗り越え、幕府の要職を歴任し、一族の繁栄にも貢献したその姿は、後世に語り継がれるべき偉業と言えるでしょう。

参考文献
『保元物語 平治物語 承久記』〈新日本古典文学大系〉岩波書店、1992年。
「振草本郷」本郷町史編纂委員会　昭和30年1月発行

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