伊籍

伊籍（い せき）

伊籍（生没年不詳）は、中国後漢末期から三国時代の蜀漢にかけての政治家。字は機伯（きはく）。兗州山陽郡東緡県（えんしゅうさんようぐんとうびんけん、現在の山東省済寧市金郷県）の出身。

生涯

荊州刺史の劉表（りゅうひょう）と同郷であったため、若い頃から劉表に仕えた。劉表の存命中から劉備（りゅうび）に接近し、劉表の死後は劉備に仕えることとなる。

劉備の益州侵攻に随行し、益州平定後には左将軍従事中郎（さしょうぐんじゅうじちゅうろう）に任命された。これは、簡雍（かんよう）・孫乾（そんけん）らに次ぐ待遇であった。

呉に使者として赴いた際、孫権（そんけん）は伊籍の弁舌の才を知っていたため、逆に言い負かしてやろうと考えた。伊籍が孫権に拝礼した際、孫権は「無道の主君に仕えて苦労しているのか？」と挑発した。これに対し伊籍は「一度拝礼して一度起つのを苦労とは言いません」と、暗に孫権を非難した。伊籍の機知に富んだ対応は常にこのようであったため、孫権は非常に感心したという。

後に昭文将軍（しょうぶんしょうぐん）に昇進し、諸葛亮（しょかつりょう）・法正（ほうせい）・劉巴（りゅうは）・李厳（りえん）らと共に、蜀の法律である蜀科（しょくか）の起草に携わった。

三国志演義における伊籍

小説『三国志演義』では、劉備の乗馬である的盧（てきろ）が凶馬であると指摘したり、蔡瑁（さいぼう）による劉備暗殺計画を伝えるなど、劉備に好意的な人物として描かれている。また、馬良（ばりょう）・馬謖（ばしょく）兄弟を劉備に推挙する場面も描かれている。

人物評価

伊籍は、弁舌の才に長け、外交交渉や機転の利いた対応で活躍した。劉備に忠義を尽くし、蜀漢の建国と発展に貢献した人物として評価されている。

参考文献

* 『三国志』蜀書8 伊籍伝

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