簡雍

簡雍（かんよう）

簡雍（かんよう）は、後漢末期の政治家であり、字（あざな）は憲和（けんわ）。幽州涿郡（ゆうしゅうたくぐん、現在の河北省涿州市）の出身です。彼の家系は、後漢の功臣である耿純（こうじゅん）に遡り、耿武（こうぶ）も同族にあたります。

生涯

簡雍は元々「耿」という姓でしたが、幽州での発音が「簡」に近かったため、後に改姓しました。劉備とは同郷であり、若い頃からの親しい友人でした。黄巾の乱が勃発すると、劉備、関羽、張飛、田豫らと共に義勇軍を結成し、校尉の鄒靖（すうせい）に従って戦いました。その後も常に劉備に付き従い、各地を転々とします。

劉備が荊州に入ると、簡雍は孫乾や糜竺と共に従事中郎（じゅうじちゅうろう）という役職に就き、劉備の話し相手や使者として活躍しました。劉備が益州へ進出すると、その人柄が益州の支配者である劉璋（りゅうしょう）に気に入られます。しかし、劉備と劉璋が対立すると、簡雍は劉璋に対して降伏を勧告する使者として派遣されました。簡雍の説得に応じた劉璋は、彼と共に城を出て劉備に降伏しました。

益州平定後、簡雍は昭徳将軍（しょうとくしょうぐん）に任命され、糜竺に次ぐ高い待遇を受けました。孫乾とも同格の待遇であったとされています（『三国志』孫乾伝）。

しかし、その後の簡雍の事績は詳しくわかっていません。建安24年（219年）に劉備を漢中王に推挙した群臣や、章武元年（221年）に劉備を皇帝に推戴した群臣の中に、簡雍の名前は見当たりません。

人物

簡雍は、大らかで落ち着いた性格であったとされています。しかし、傲慢な一面もあり、劉備の前でもだらしない態度を改めませんでした。諸葛亮らに対しても全く遠慮せず、自分だけ長椅子の上で寝そべったまま談笑することもあったそうです。

ある時、旱魃（かんばつ）のために禁酒令が出され、酒造道具を持っていたというだけで逮捕された者がいました。簡雍が劉備と共に市街を歩いていた際、道行く男女を見て「あの二人は淫行の罪を犯そうとしているのに、なぜ捕らえないのですか」と尋ねました。劉備が「なぜそれがわかるのか」と尋ねると、簡雍は「あの者たちは淫行の道具を持っていますから」と答えました。劉備は大笑いし、酒造道具の所有者を赦免することにしたという逸話が残っています。

三国志演義

小説『三国志演義』においても、簡雍は劉備配下の文官として登場し、劉備の旗揚げから行動を共にします。長坂の戦いでは、曹操軍の追撃による混乱の中で負傷し、動けなくなっているところを趙雲に発見され、救出されます。また、劉璋への降伏勧告の使者として赴いた際には、劉璋配下の秦宓（しんべき）に無礼を咎められ、素直に謝罪する場面も描かれています。

簡雍は、劉備の初期から支えた人物であり、その独特な人柄で劉備の傍に仕えました。正史における記述は少ないものの、『三国志演義』などの物語を通して、その存在は広く知られています。

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