馬良

馬良（ば りょう）

馬良（ば りょう、字は季常）は、後漢末期から三国時代の蜀漢に仕えた政治家です。荊州襄陽郡宜城県の出身で、「馬氏五常」と呼ばれる五人兄弟の四男であり、馬謖の兄としても知られています。

生涯

馬良は、眉に白い毛が混じっていたことから「白眉」という渾名で呼ばれていました。馬良を含む馬氏の兄弟たちは皆優秀で、特に馬良はその中でも傑出しており、「馬氏の五常、白眉最も良し」と評されました。この故事が由来となり、現在では、同類の中で最も優れた人物や物を「白眉」と呼ぶようになりました。

劉備が荊州を支配するようになると、馬良は弟の馬謖と共に劉備に仕え、従事に取り立てられました。劉備が益州へ入蜀する際には、馬謖が随行し、馬良は荊州に留め置かれました。その後、諸葛亮も劉備に従い荊州を離れますが、馬良は引き続き荊州の守備を任されました。馬良は雒城攻略の報を聞き、諸葛亮に手紙を送って祝意を伝えています。この手紙の中で、馬良は諸葛亮を「尊兄」と呼んでおり、歴史家の裴松之は、二人が義兄弟の契りを結んでいたのではないかと推測しています。益州平定後、馬良は左将軍掾に任じられました。

建安20年（215年）、荊州の領有権を巡る争いが解決しない中、孫権が魯粛・呂蒙・甘寧らに命じて長沙・桂陽・零陵の三郡を攻撃させると、関羽が3万の兵を率いて益陽に布陣し、馬良もこれに同行しました。

呉への使者として派遣される際には、諸葛亮に取り成しの手紙を依頼しました。諸葛亮は馬良に紹介文の草稿を書かせていますが、その草稿は史書にも掲載されています。孫権は馬良を手厚くもてなしたと伝えられています。

建安25年（220年）、劉備が蜀漢の初代皇帝に即位すると、馬良は侍中に任命されました。

章武2年（222年）、劉備による呉征伐（夷陵の戦い）に従軍し、武陵蛮を味方につける任務を任されました。馬良はこの任務を成功させ、異民族の頭領らは蜀の官位と印綬を与えられました。しかし、その後の夷陵の戦いで蜀軍は大敗を喫し、馬良も戦死しました。享年36歳。益陽市の市史や伝承によれば、帰順した異民族を率いて戦場へ向かう途中、益陽県城付近で歩騭・甘寧の軍と遭遇し、異民族軍は呉軍に勝利したものの、本戦を見ることなく馬良は戦死したとされています。益陽市の資陽区には、「馬良村」や「馬良湖」など、馬良の名を残す地名が今も存在します。

馬良の死後、劉備は馬良の子である馬秉を騎都尉に任じました。

評価

陳寿は、馬良を誠実で蜀にとって良き臣下であったと評価しています。

楊戯の著した『季漢輔臣賛』においても、馬良の誠実さが称えられ、その志の高さと荊楚地方における傑出した人物であったことが記されています。

三国志演義における馬良

小説『三国志演義』では、馬良は劉備が荊州を支配した際に伊籍の推薦によって仕官したとされています。

雒城で苦戦する劉備と龐統のもとを訪れ、諸葛亮が天候を観測した結果、凶兆が出ていることを伝えます。しかし、龐統はこの忠告を諸葛亮の嫉妬によるものとして無視し、まもなく落鳳坡で戦死します。その後、諸葛亮が劉備の軍師となるため荊州を離れると、関羽が荊州の留守を預かることになり、馬良は文官の一人として関羽を補佐します。

関羽が樊城を守る曹仁を攻めた際、毒矢を受け、華佗の治療を受けることになります。関羽が馬良と囲碁をしながら平然と手術を受ける場面が描かれています。呂蒙と陸遜による背後からの襲撃で関羽が窮地に陥ると、伊籍と共に成都へ援軍を要請するため使者として派遣されます。

夷陵の戦いでは、戦況が長期化する中で劉備の布陣に疑問を持ち、諸葛亮に意見を求めることを進言します。劉備の命令で諸葛亮のもとへ向かい、諸葛亮は劉備の布陣に致命的な欠陥があることを指摘し、馬良を急いで劉備の陣へ戻しますが間に合わず、劉備は大敗を喫してしまいます。史実とは異なり、『三国志演義』では夷陵の戦いで戦死せず、諸葛亮の南征中に死去したとされ、輸送部隊を率いてきた馬謖が諸葛亮にその死を伝えています。

もう一度検索