伊豆急行8000系電車

伊豆急行8000系電車は、2005年 4月1日に営業運転を開始した、伊豆急行が保有する電車です。元々は東急電鉄で活躍していた8000系を譲り受け、伊豆急行向けに改造した車両で、主に伊豆急線内の普通列車として運用されています。

概要

1990年代後半、伊豆急行では100系の老朽化が進んでおり、代替車両の検討が行われました。その際、親会社である東急電鉄の8000系が候補に挙がりましたが、当時は8000系の廃車予定がなかったため、代替としてJR東日本から113系・115系を譲り受け、200系として導入しました。

その後、2004年に東急電鉄から8000系（8500系1両を含む）の譲渡を受け、改造・整備を経て導入。これにより、200系全車両と2100系「リゾート21」の一部編成が置き換えられました。

導入にあたり、形式はそのままに、形式名・車両番号を8001からに変更。「デハ」の呼称を「クモハ」・「モハ」に改められました。

構造

車体・機器類

制御装置などの基本構造は東急時代のものを踏襲していますが、MT比やATSの関係から、最高速度は110km/hから100km/hへ、起動加速度は3.3km/h/sから2.0km/h/sへと抑えられています。回生ブレーキの失効速度も変更されており、単独車（現存せず）は45km/h、ユニット車は22km/hとなっています。

クモハ8150形は、東急8000系に制御電動車が存在しなかったため、走行機器付きの中間電動車・8100形に運転台を設置して用意されました。増設された先頭部は、上部の通過標識灯（急行灯）や側面のコルゲート板がないものの、それ以外の形状はオリジナルの先頭車に準じたものとなっています。

外観は、車体外部の帯が100系をイメージした濃淡2色の水色（ハワイアンブルー）に変更されています。

クモハ8250形は、当初制御車のクハ8050形に改造される予定でしたが、クハ8050形の消滅後に改造された車両は、クモハ8150形とは異なり、東急クハ8000形から改造されています。離線対策としてパンタグラフが新設されましたが、搭載スペースの関係から、運転台側の冷房機1基が撤去され、その跡地に設置されています。冷却能力の低下を補うため、運転台上部に小型冷房機が設置され、干渉を防ぐためにパンタグラフはシングルアーム式となっています。

モハ8200形は、短編成での運行時の離線対策として、パンタグラフを持つデハ8100形に東急デハ8200形の床下機器を移設し、パンタグラフ付き車両に改造されました。クモハ8250形も機構的にはモハ8200形に準じたものとなっています。

種車に東急8500系のデハ8700形が1両存在しますが、設計上8000系と同グループのため、形状・性能に大きな差異はありません。改造時に他車と同じクモハ8150形に編入されており、判別は困難です。

これらの改造には、東急8000系の解体時に発生した部品が一部使用されています。

先頭車には、排障器（スカート）と連結作業対策の電気連結器が設置されています。排障器は東急9000系などと同形状です。

車内

海側（伊豆急下田に向かって左側）の座席は、車端部を除きクロスシートに変更されました。座席は西武鉄道10000系（NRA）のリニューアル工事で不要になったものを再利用しており、ドア間にボックス席を2つ設置するため、水平より約5°前傾した状態で設置されています。背面テーブルは撤去され、回転・リクライニング機構は使用停止されています。クロスシート部分のつり革は撤去され、持ち手とシート固定のためのパイプが増設されています。

長距離乗車に配慮し、モハ8200形の熱海寄りの車端部にトイレ（洋式）が設置されました。バリアフリー対応として、モハ8200形のトイレ向かいに車椅子スペースが設けられています。

乗車案内の向上とバリアフリー対応のため、ドア上部に蛍光表示管式の旅客案内表示装置と開閉を知らせるチャイムが設置されています。旅客案内表示装置は千鳥状配置で、1両あたり4基が設置されています。チャイムは高低2打点×3で、全体的に高めの設定です。

長時間停車時の車内保温対策として、3/4ドアカット機構が追加されました。

ロングシート部分は、車両によって東急時代の更新工事の有無で形状が異なっています。更新車はドア間の座席が仕切りで4人掛と3人掛に区分され、端部にも仕切りが設置されています。

車体側面の社章は、2005年度入線車は東急時代の社章プレートの「TOKYU」部分に「IZUKYU」の文字を被せたものが使用されていましたが、2006年度入線車から新規作成されたものが設置されるようになり、2005年度入線車も交換されました。新しい社章プレートは東急と同デザインですが、色が赤からオレンジに変更されています。

その他、運行面の改造として、ワンマン運転への対応や伊東線への入線装備の追加が行われています。ワンマン運転時には、前面貫通扉窓の上部に「ワンマン」の看板が取り付けられます。一部の車両にはレールへの塗油器も設置されています。

東急デハ8100・8700形を種車とする3形式は、熱海寄り車端部に両開き扉が設置されています。先頭部にも貫通扉がありますが、幌は装備されておらず、非常時以外の通り抜けには対応していません。

運用

熱海駅 - 伊東駅 - 伊豆急下田駅間の普通列車で運用され、伊東線に乗り入れています。伊東線の線内折り返し運用にも使用されます。

本系列は運転台に両手操作式のT字型ワンハンドルマスコンを装備しているため、営業開始前にJR東日本の乗務員を対象に伊東駅構内でハンドル訓練が実施されました。JRの線路上を両手操作式ワンハンドルマスコン・界磁チョッパ制御の車両が走行するのは本形式が初の事例であり、2023年現在も唯一となっています。

種車の製造から50年近く経過し老朽化が進んだことから、2022年からJRから譲渡された209系を改造した3000系が導入され、本形式の2編成6両が運用を離脱しました。今後も順次本系列の置き換えを進めていく計画があります。

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