伊豆箱根鉄道1100系電車

伊豆箱根鉄道1100系電車：西武701系から受け継がれた駿豆線の足跡

伊豆箱根鉄道1100系電車は、1989年から2012年にかけて伊豆箱根鉄道駿豆線で活躍した通勤形電車です。親会社である西武鉄道から譲渡された701系電車を改造したもので、駿豆線の冷房化率向上に大きく貢献しました。

導入の背景と概要

1980年代後半、伊豆箱根鉄道駿豆線では老朽化した車両の置き換えと、利用客からの要望が高まっていた冷房化の推進が急務となっていました。そこで、親会社である西武鉄道で余剰となっていた701系電車に着目し、1989年と1990年の二度にわたり、4両編成3本が譲渡されることとなりました。

譲渡された701系は、伊豆箱根鉄道大場工場で改造を受け、3両編成化されました。この際、編成はクモハ1100形、モハ1200形、クハ2100形という構成に変更されています。また、車両番号は代替対象となった1000系電車のものを継承したため、形式名は「1100系」であるものの、1100番台の車両は存在しません。

車両の仕様と改造

譲渡当初、車体塗装は西武鉄道時代のまま、ステンレス無塗装の客用扉もそのままの状態でした。しかし、伊豆箱根鉄道への導入に際し、車体は3000系に準じた「ライオンズブルー」と呼ばれる青と白のツートンカラーに塗り替えられ、客用扉も車体同色に塗装されました。

3両編成化に際しては、旧モハ701形奇数車の台車や主電動機などの床下機器を旧クハ1701形奇数車に移設し、同車を電動車化するという方法が採られました。また、旧クハ1701形偶数車の台車はFS342Tに交換され、編成内の台車が統一されています。その他、短編成化に伴う電動発電機 (MG) の換装、制輪子の交換、電気連結器の撤去、ATSの交換、列車無線の変更、自動放送装置の新設などが実施されました。

内装はほぼ西武鉄道時代のままで、オールロングシート仕様となっています。ただし、入線時にATSが搭載されたことで、運転台仕切直後の座席が撤去され、後年そこが車椅子スペースとして活用されました。

主要機器

1100系電車の主要機器は、基本的に西武鉄道時代から変更されていません。主電動機は日立製作所製のHS-836-Frb、主制御器は日立製作所製の電動カム軸式MMC-HT-20Aを搭載しています。制動装置は電磁直通空気制動 (HSC) です。また、電動空気圧縮機 (CP) はクハ2100形に2基搭載されています。

導入後の変遷と引退

1100系電車は、導入後も細かな変更が加えられています。全編成でMGの再換装が行われたほか、クハ2100形に搭載するCPがMH16B-AK3からHB-2000へ換装されました。また、第1編成（1009編成）はワンマン運転に対応させるため、ワンマン・ツーマン切替スイッチや戸閉放送スイッチなどが設置されました。

しかし、車齢40年を超えて老朽化が著しくなったことから、2009年以降、同じく西武鉄道からの譲受車である1300系電車の導入によって代替が進められることとなり、2012年6月13日をもって全編成が引退しました。

編成と車歴

(詳細な編成表と車歴は割愛します。参考文献をご参照ください。)

まとめ

伊豆箱根鉄道1100系電車は、西武鉄道701系電車を譲り受け、伊豆箱根鉄道の輸送を支えた車両です。3両編成化や冷房化改造など、時代に合わせた変化を遂げながら、20年以上にわたって駿豆線で活躍しました。その功績は、伊豆箱根鉄道の歴史に深く刻まれています。

参考文献

『RM LIBRARY』 ネコ・パブリッシング
『鉄道ピクトリアル』 鉄道図書刊行会
* 『新車年鑑』・『鉄道車両年鑑』 鉄道ピクトリアル臨時増刊号 鉄道図書刊行会

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