一条実雅

一条実雅（いちじょう さねまさ）

一条実雅は、建久7年（1196年）に生まれ、安貞2年（1228年）に没した鎌倉時代初期の公卿です。藤原北家頼宗流に連なり、権中納言・一条能保の三男として生まれました。官位は従三位・参議にまで昇り、伊予宰相中将と称されました。

生涯

実雅は、太政大臣である西園寺公経を姉婿に持ち、その猶子となったことが彼の運命を大きく左右しました。建仁3年（1203年）に従五位下に叙爵し、公卿としての道を歩み始めます。建永元年（1206年）には侍従に任官。建保5年（1217年）には伊予守に任じられ、翌年には左近衛少将を兼ねたことから、伊予少将とも呼ばれました。

建保6年（1218年）には、鎌倉幕府将軍である源実朝の左近衛大将拝賀に供奉するため鎌倉へ下向。そのまま鎌倉に住むこととなり、建保7年（1219年）には実朝の右大臣就任に伴う鶴岡八幡宮参詣に随従し、実朝暗殺の現場を目撃するという衝撃的な出来事を経験します。その後、姉の孫にあたる三寅（後の九条頼経）が鎌倉殿として迎えられることになると、その下向に供奉しました。承久元年（1219年）には、執権・北条義時の娘を妻に迎え、承久2年（1220年）に男子、承久4年（1222年）には女子が生まれています。

承久元年（1219年）に正五位下、承久2年（1220年）に従四位下・右近衛中将、承久3年（1221年）に従四位上と、順調に昇進を重ねました。承久3年（1221年）に勃発した承久の乱では、鎌倉に在住していたため参加することはなく、兄弟である信能や尊長とは異なり、処罰を免れています。承久4年（1222年）には、在関東のまま参議に任じられ、公卿の仲間入りを果たしました。三寅の側近であり、義時の娘婿という立場から、幕府内部にも深く関与し、御家人を集めて軍事訓練を行うなど、幕府内に一定の勢力を築き上げました。

しかし、元仁元年（1224年）に、妻の母である伊賀の方と、その兄である伊賀光宗が、義時の死後、後継者として伊賀の方の息子である北条政村を擁立し、実雅を三寅に代わる新たな将軍に立てようと画策していたという嫌疑がかけられ、伊賀氏事件が起こります。実雅は妻と離縁させられた上で京へ送還され、越前国へと配流されることとなりました。

もっとも、伊賀氏謀反の風聞については、北条泰時が否定的な見解を示しており、『吾妻鏡』においても伊賀氏が謀反を企てたとは一度も明言されていません。伊賀氏が処分された事実のみが記されています。そのため、伊賀氏事件は、鎌倉殿や北条氏の代替わりによる自らの影響力の低下を恐れた政子が、義時の後妻の実家である伊賀氏を強引に排除するために仕組んだ事件であるという説も存在します。なお、実雅の妻であった義時と伊賀の方の娘は、嘉禄元年（1225年）11月以降に公家の唐橋通時と再婚しています。

安貞2年（1228年）4月1日、実雅は配流先で死去しました。『尊卑分脈』には「河死」、『公卿補任』には「沈河死去」と記されており、幕府の命令によって殺害された可能性も指摘されています。

官歴

建仁3年（1203年） 正月5日：従五位下
建永元年（1206年） 4月3日：侍従
承元4年（1211年） 正月5日：従五位上。正月14日：越前介
建保5年（1217年） 正月28日：伊予守。12月12日：止守
建保6年（1218年） 3月6日：還任守。4月9日：兼左近衛少将
承久元年（1219年） 正月5日：正五位下
承久2年（1220年） 正月6日：従四位下、少将如元。4月6日：右近衛中将
承久3年（1221年） 7月28日：兼讃岐守。11月29日：従四位上
貞応元年（1222年） 8月16日：参議、中将如元。11月22日：正四位下
貞応2年（1223年） 正月27日：美作権守。10月28日：従三位
貞応3年（1224年） 8月10日：入洛。9月20日：止所職。10月1日：遣越前国
安貞2年（1228年) 4月1日：死去

系譜

父：一条能保
母：家女房（藤原有恒の娘）
妻：北条義時の娘
男子
女子
生母不明
* 男子：一条実顕

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