伊賀弘三良

伊賀 弘三良の生涯と業績

伊賀弘三良（いが こうざぶろう、1928年3月16日 – 1998年11月22日）は、兵庫県神崎郡香寺町に生まれた卓越した編集者であり、出版業界において重要な役割を果たしました。彼は、創造的な才能と商業的なセンスを兼ね備えており、特に祥伝社において数々の成功を収めました。

学歴とキャリアの始まり

伊賀は旧制姫路中学校から陸軍予科士官学校、さらに旧制第六高等学校を経て東京大学文学部仏文科を卒業します。当初は作家を志望していましたが、渡辺一夫教授との出会いをきっかけに神吉晴夫に紹介され、1953年に大卒一期生として光文社に入社しました。この時、同じく入社したのが後に祥伝社社長となる藤岡俊夫です。

入社後、彼は出版局に配属され、1955年には京大の動物学者・伊谷純一郎による『高崎山のサル』を企画し、これが大ヒットとなります。この作品の成功が、彼の編集者としての名声を高めるスタートとなりました。

カッパ・ノベルスと成長の軌跡

1959年にはカッパ・ノベルスの創刊編集長に就任し、その後はカッパ・ブックスの編集長も兼任します。彼はこの雑誌から松本清張の社会派推理小説を続々と刊行し、このジャンルの言葉を考案したことでも知られています。また、小松左京の大作である『日本沈没』の出版をも支援しました。伊賀は、作品を世に送り出すだけでなく、作家に対しても積極的に声を掛け、長期間にわたって彼らと共に締結を進めました。

“ノベルス”や“月刊宝石”など複数の雑誌で編集長を歴任した彼は、30代の若さで役員昇進を果たし、書籍グループの統括責任者となります。残念ながら労働争議によって他の役員と共に戦略的に退社し、1970年に藤岡俊夫や櫻井秀勲とともに祥伝社を設立します。ここでの彼の役割は取締役としてのものでした。

ダイナミックな出版物の創造

1970年には新たにノン・ブックを創刊し、松原泰道の『般若心経入門』や五島勉の『ノストラダムスの大予言』シリーズを通じて多くのベストセラーを世に送り出します。これに続き、ノン・ノベルを立ち上げ、平井和正や夢枕獏、菊地秀行、内田康夫などの流行作家を育てました。また、半村良を際立たせる際には「伝奇推理」という独自の言葉を造り出しました。

1980年に常務取締役となり、1985年から1993年にかけては祥伝社の社長としてその指導力を発揮しました。この時期、彼は新たな編集方針を打ち出し、多くの人気作品の制作に貢献。彼は業界の変遷を繊細に捉え、次世代の作家とも深い信頼関係を築くことに成功しています。

燃え尽きるまでの情熱

その後、取締役相談役を経て再び出版部に戻り、編集者としてのキャリアを再開しました。川喜田二郎の『野生の復興』や曽野綾子の『完本・戒老録』などのヒット作を生み出しますが、1998年に70歳で病に倒れ、その生涯を閉じます。彼の業績は、多くの作家や編集者に影響を与え、今もなお出版界における金字塔として君臨しています。

もう一度検索