会館

会館（かいかん）

会館とは、本来は中国において商業や工業に携わる人々が、互いの親睦や助け合いを目的に組織し、その活動拠点として設けた建物を指します。同業者や同郷者が集まるための施設として機能しました。

その歴史は古く、宋の時代にまで遡るとされています。明代以降に体制が整えられて隆盛に向かい、特に清代には最盛期を迎えました。しかし、中華民国期以降はその勢いを失い、次第に衰退していきました。

会館が担っていた目的は非常に多岐にわたります。単なる親睦だけでなく、商業に関する協議、相互扶助、さらには共同での祭祀なども行われました。その規模も様々で、大きな省単位から小さな県単位のものまで存在しました。建物の形態も、独立した立派な会館建築を持つものから、既存の建物の一部を借りて運営される小規模なものまで多種多様でした。

大きな会館には、充実した施設が備えられていました。遠方から来た関係者や科挙の受験生などが宿泊するための宿舎機能や、商品の保管に用いられる倉庫がありました。また、集会や娯楽のために京劇などが上演される舞台（魯大鳴『京劇入門』音楽之友社、P46）を持つ会館も少なくありませんでした。さらに特筆すべきは、遠方で客死した関係者の遺体を、故郷に送還して埋葬するまでの間、一時的に安置するための設備まで備えている会館もあったことです。宿舎は単に一時的な宿泊に使われただけでなく、長期にわたって居住する者もおり、例えば北京の会館の中には「康有為故居」のように、著名人がかつて暮らしていた場所として記録されている例も存在します。

中国各地、特に北京のような主要都市では、商人たちは自身の出身地別や、営む事業の業種別に分かれて会館を組織し、集まりました。これが同郷会館や同業会館と呼ばれるものです。同郷会館としては、山西会館、潮州会館、安徽会館、湖広会館などがよく知られています。一方、同業会館の例としては、質屋が集まる当商会館や、金融業を営む銭荘が集まる銭業会館などがありました。また、客家のように特定の地域出身であることに加えて、独自の文化やコミュニティを持つ集団が、出身地の会館とは別に客家会館のような独自の会館を設けるケースもありました。

会館の概念は、中国国内だけでなく、国外に広がった中華街においても引き継がれました。世界各地の中華街には、故郷を離れた人々が互いに助け合い、交流を深めるための同郷会館が数多く建設されました。

現代の日本においても、「会館」という名称は広く用いられています。ただし、その意味合いは中国本来のそれとは異なり、一般的な集会場や事務所、あるいは特定の団体や行政機関の施設などを指すことがほとんどです。例えば、日本の首都圏には、砂防会館や九段会館のような例があります。これらの建物は、かつての中国の会館が持っていた商業的・互助的な機能とは直接的な関連は薄いですが、人々が集まる「建物」を指す言葉として、「会館」という名称が受け継がれていると言えるでしょう。

関連項目

邸店
行 (同業組合)
クラブ
県人会

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