伝言ダイヤル

伝言ダイヤルとは

伝言ダイヤルは、かつてNTTコミュニケーションズが提供していた、加入電話や公衆電話から伝言を録音、再生、追加録音できる電気通信サービスです。しかし、携帯電話やPHS、直収電話、IP電話からは利用できませんでした。

歴史

1986年にNTTによってサービスが開始されました。サービスの内容は、6桁から10桁のボックス番号と4桁の暗証番号を入力することで、伝言の録音、再生、追加録音が可能になるというものでした。

サービス開始当初は、「#+4桁」から成る専用の短縮番号（#ダイヤル）で電話をかける方式だったため、ダイヤル回線契約の電話からは利用できず、プッシュ式公衆電話、プッシュ回線契約電話、ISDN回線契約電話のみが利用可能でした。

しかし、携帯電話やSNSの普及に伴い利用者が大幅に減少したため、2016年 2月29日にサービスは終了しました。

初期サービス：アクセス方法

東京伝言ダイヤルセンターを例に挙げると、サービスエリア内で「#8300」をダイヤルすると、市内交換機に設置された「#ダイヤルレジスター」が、本来の東京伝言ダイヤルセンター録音用電話番号である「0170-00-8300」に変換して発信していました。

初期の伝言ダイヤルは「#8△00、#8△01、#8△02、#8△03、#8△04、#8△05」という専用の短縮番号（#ダイヤル）としてスタートし、「0170-」で始まる番号は一般には公開されていませんでした。ただし、「0170-」で始まる番号を直接ダイヤルした場合、電話機に「パルス-PB音切り替えスイッチ」があれば、ダイヤル回線契約の電話からでも利用が可能でした。しかし、当時はNTTがプッシュ式公衆電話、プッシュ回線契約電話、ISDN回線契約電話専用のサービスとして提供していたため、ダイヤル回線契約の電話はサービス対象外でした。

初期サービス：エリアと料金

サービス提供エリアは、センター所在都市が属する単位料金区域（MA）と、そこから方形区画に基づく通話距離が40km以内にある単位料金区域、さらに「離島特例措置」により通話料金が「隣接・20kmまでの区域」と同等となる単位料金区域でした。

利用料金は、通話料に加えて「伝言ダイヤルサービス利用料」も徴収され、センター所在都市までの実際の距離よりも2ランク高い距離ランクに相当するダイヤル通話料金が課金されていました。

例えば、東京伝言ダイヤルセンターの場合、以下のようになっていました。

料金ランク1:
東京MA内での利用は、「20kmを超え40kmまでのダイヤル通話料金」として「30秒で10円」が課金されました。
料金ランク2:
東京から隣接する20km圏内や離島特例地区からの利用は、「40kmを超え60kmまでのダイヤル通話料金」として「21秒で10円」が課金されました。
料金ランク3:
東京から20kmを超え40kmまでの区域からの利用は、「60kmを超え80kmまでのダイヤル通話料金」として、昼間は「15.5秒で10円」、夜間・日曜・祝日は「21秒で10円」が課金されました。

サービス装置本体は離れた都市に設置されている場合もありましたが、サービスセンター所在都市の料金で課金されていました。

初期サービス：独立性

サービスエリア内の各市内交換機から変換発信された「0170-△0-発信のダイヤル信号」は、サービスエリア内の市内回線・市外回線網を経由して、サービスセンター所在地の市外交換機に送られました。しかし、そこから先の全国へ通じる市外回線網への展開設定がされていなかったため、エリア外からはサービスを利用できませんでした。各サービスエリアは完全に独立しており、東京で録音した伝言を名古屋や大阪で再生することはできませんでした。

また、「0170-△0-」は通常の市外局番とは異なり、NTTはエリア内のセンター所在地の市外交換機を経由してセンター装置にアクセスするための「エリア内限定市外局番」として交換機を設定していました。

初期サービス：操作方法

初回録音

1. 「#8300」をダイヤル。
2. 「NTT東京伝言ダイヤルセンターです。」というメッセージが流れます。
3. 6～10桁のボックス番号（連絡番号）と「#」を入力。
4. 4桁の暗証番号と「#」を入力。
5. 30秒以内で録音。

再生・追加録音

1. 「#8301」をダイヤル。
2. 「NTT東京伝言ダイヤルセンターです。」というメッセージが流れます。
3. 6～10桁のボックス番号（連絡番号）と「#」を入力。
4. 4桁の暗証番号と「#」を入力。
5. 「7#」で再生、「3#」で追加録音を選択。

最大録音件数は1つのボックス番号につき10件まで、各伝言の長さは30秒以内、録音保存時間は8時間でした。

初期サービス：問題点

当初は仲間内での情報伝達目的で提供されたサービスでしたが、特定のボックス番号が誰でも利用できる「オープンボックス」として使われるようになりました。そこから派生して、特定の4桁の番号を利用した伝言ボックスも作られ、チャットルームのような使われ方もされました。これがきっかけで、伝言ダイヤルは出会い系サービスの走りとして一時人気を博しましたが、非行少年、援助交際、未成年の性交の温床ともなり、社会問題化しました。

また、ダイヤルQ2業者の音声広告でオープンボックスが埋め尽くされるようになり、出会い系サービスとしての利便性が低下しました。

さらに、「0170-」の番号を一般に公開していなかったため、ダイヤル回線からの利用が難しく、エリア外では利用できないという不便さもありました。

新・伝言ダイヤルへの移行

1999年 9月21日、NTTはこれらの問題を解消するため、各都道府県のセンターに県番号を含む「新・0170-番号」を新規制定しました。

この「新・0170-番号」は正式に公開され、ダイヤル回線からもサービスの利用が可能になりました。また、録音・再生が共通の番号となり、エリア外からの利用も可能になりました。

録音件数は1連絡番号あたり20件に増え、各伝言の長さは60秒以内、録音保存時間は24時間に延長されました。

災害用伝言ダイヤル (171)

1995年の阪神淡路大震災を教訓に、1998年 3月から災害発生時に被災地との連絡のみに利用可能な災害伝言ダイヤルサービスが開始されました。番号は「171」です。

廃止

携帯電話やSNSの普及に伴い、伝言ダイヤルの利用者は大幅に減少し、2016年 2月29日にサービスは終了しました。ただし、災害用伝言ダイヤル（171）は現在も継続されています。