低密度ポリエチレン

低密度ポリエチレン（LDPE）

低密度ポリエチレン、略称LDPE（Low Density Polyethylene）は、エチレンがランダムに分岐した構造を持つ結晶性の熱可塑性樹脂です。この材料は、その柔軟性や加工のしやすさから、様々な産業で重要な役割を果たしています。LDPEは、一般に軟質ポリエチレンと呼ばれており、高圧法によって製造されるため、高圧法ポリエチレンとも称されます。

定義と特性

LDPEは、旧JIS K6748:1995において、密度が0.910以上0.930未満のポリエチレンとして規定されています。この材料は、不規則な分岐構造を持っているため、結晶化が進みにくく、低い融点と柔軟性を有しています。樹脂識別コードは4です。

実際に、LDPEは比重が0.92前後で軽く、乳白色半透明の外観を持ち、フィルム成形を行うとほぼ透明となります。その特性としては、無味無臭であり、柔軟さや剛性の低さに加えて、衝撃強度に優れた性質があります。具体的には、実用温度が-60℃まで耐える耐寒性を持つ一方、融点は100～115℃で、耐熱性には劣ることが特徴です。

また、LDPEは耐水性と無機溶剤に対する耐化学性に優れていますが、石油系溶剤やトルエン、ベンゼンには弱く、環境応力亀裂のリスクがあります。加工性が良いため、様々な製品に応じた成形が容易であり、電気的絶縁特性も比較的良好です。しかし、染料による着色が難しかったり、接着や印刷加工性に劣る点もあります。

製法

LDPEの製造は、石油を基本としたナフサを熱分解しエチレンを得た後、高圧法でラジカル重合を行うことで行われます。この高圧法は、空気中の酸素や過酸化物を触媒として用いた一連の過程からなり、エチレンを1,000～4,000気圧の環境で重合し、冷却することでLDPEが製造されます。この方法により、多くの長鎖分岐（LCB）や短鎖分岐（SCB）を持つ複雑な構造が形成され、材料の柔軟性と特性に大きな影響を与えます。

用途

LDPEは、包装用フィルムとして使用されることが多く、その低コストが菓子や衣類の簡易包装やごみ袋として重宝される理由です。また、水分を含んだ生鮮食品の包装にも適しており、いわゆる「プチプチ」として知られる気泡緩衝材もLDPE製です。さらに、農業用の黒いフィルムや熱で収縮するシュリンクフィルム、衛生手袋など、広範囲に使用されています。

最近では、ビーズ成形や炭酸ガスによる発泡体の開発も行われ、さまざまな形状の製品が登場しています。低い融点はヒートシール材料としての特性を活かし、共押出材料としても重宝されています。最後に、中空成形により、柔らかい容器が多数作られており、押出成形された製品としては柔軟な水撒きホースや、軽やかな風合いを持った造花の容器なども多くあります。

歴史

LDPEは1933年にイギリスのインペリアル・ケミカル・インダストリーズによって偶然発見され、1939年には工業化されました。第二次世界大戦中には、レーダーや兵器の部品としても使用され、戦後はその軽量さと衝撃強度が評価され、日常生活での使用が広がりました。

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