佐味田宝塚古墳

佐味田宝塚古墳の概要

佐味田宝塚古墳（さみたたからづかこふん）は、奈良県北葛城郡河合町に位置する前方後円墳です。この古墳は馬見古墳群の一部を成し、国の史跡に指定されています。また、古墳から出土した品々は国の重要文化財として保護されています。本古墳の全長は111.5メートル、後円部の直径は60メートルに達し、その大きさと形状は当時の権力を象徴しています。

構造と出土品

佐味田宝塚古墳の墳丘は、北東を向いた前方部を持ち、周囲には濠が確認されていません。1882年には、この古墳から約36面の銅鏡が発掘され、その中には直径22.9センチメートルの家屋文鏡が含まれています。この鏡は、古墳に埋葬された人物たちの居館を描写しており、4世紀頃の祭りや政治活動に用いられていた建物の様子を表現しています。

出土した他の遺物には、玉類、石釧、鍬形石、石製合子、滑石製模造品、銅鏃、巴形銅器、刀子、剣、斧、鑿など多岐にわたる計140点が含まれています。これらの遺物は東京国立博物館、奈良国立博物館、宮内庁で保管されています。また、埋葬施設は粘土槨で、その周囲には排水を目的とした礫を埋めた溝が設けられていたとされています。

1985年に行われた墳丘の調査により、この古墳は4世紀末から5世紀初頭の間に築造されたことが確認され、馬見地域では最初の前方後円墳とされています。墳丘は削平されているものの、元々は後円部が正円形をしていたと考えられ、現在は楕円形に変化しています。また、埴輪は鰭付円筒埴輪が並び、くびれ部には形象埴輪が存在しています。

家屋文鏡に描かれた建物

出土した家屋文鏡は、4棟の異なる建物を描写しています。これらの建物は、当時の住居や倉庫の様子を示す貴重な資料となっています。

• - A棟：住居とされる竪穴建物で、広い床面を持ち、祭祀や日常生活に使われたと考えられています。
• - B棟：平屋の建物で、大陸風の設計が伺えます。入母屋形の屋根を持ち、観音開きのような壁が特徴です。
• - C棟：高床の入母屋型建物で、身分の高い人のために設計されたと考えられ、祭儀の中心的な役割を果たしていたでしょう。
• - D棟：切り妻型屋根を持つ高床の建物で、収納のための空間を設けています。これらの建物の描写は、当時の社会の様子や人々の生活を見事に伝えています。

文化財としての位置づけ

1987年には、佐味田宝塚古墳が国の史跡に指定されました。この古墳から発掘された遺物は、考古学や文化財保護において重要な役割を果たしています。出土品の中には、18面の銅鏡や多くの玉類が含まれ、特に家屋文鏡は文化財として高く評価されています。これらの遺物は、古代の生活や文化を深く知るための貴重な手がかりです。近年では、これらの情報をもとに更なる研究が進められています。佐味田宝塚古墳は、私たちに古代の謎を解き明かす鍵を提供し続けています。

もう一度検索