佐東銀山城の戦い

佐東銀山城の戦い

佐東銀山城の戦い（さとうかなやまじょうのたたかい）は、安芸武田氏の本拠地であった佐東銀山城（現在の広島市安佐南区）を巡り、大内氏が攻防を繰り広げた戦いです。この戦いは、戦国時代の安芸国における勢力争いを象徴する出来事であり、特に大永4年（1524年）と天文10年（1541年）の二つの主要な戦いがあります。

背景

安芸武田氏は、安芸への進出を狙う大内氏に長年苦しめられていました。武田元繁は一時、大内氏に服属を余儀なくされましたが、大内義興が上洛した隙に独立を画策し、尼子氏に接近します。しかし、有田中井手の戦いで毛利元就に敗北し、武田氏は弱体化しました。元繁の後を継いだ武田光和は、尼子氏の力を借りて再建を図るも、大内氏と尼子氏の対立を激化させました。大永3年（1523年）には、大内氏が九州に出陣している間に尼子氏が鏡山城を奪取し、両氏の対立は決定的になります。

大永4年（1524年）の戦い

大内氏の安芸侵攻

大内氏は、鏡山城を奪われた報復として、大永4年（1524年）5月下旬に25,000の大軍で安芸に侵攻しました。厳島に本陣を構え、武田光和と友田興藤の軍勢は、門山城の後詰として大野女滝に出陣しましたが、大野弾正の内応により敗北。武田軍は大きな損害を受けました。

佐東銀山城の包囲と尼子氏の救援

大内軍は、本陣を門山城に移すと、大内義興率いる10,000が桜尾城を、大内義隆率いる15,000が佐東銀山城を攻撃しました。この戦いが初陣となった義隆には、陶興房らが付き従いました。佐東銀山城付近では、熊谷信直や香川吉景らの武田方国人衆が、大内軍の動向を窺っていました。陶興房は、国人衆が城に入ることを警戒しつつも、杉氏と問田氏が勝手に襲撃を仕掛け、逆に伏兵に遭い撃退されるという一幕もありました。

7月3日、光和は城兵3,000と共に籠城しましたが、城外へ出て大内軍と激戦を繰り広げ、日暮れまで勝敗は決しませんでした。一方、毛利元就の急使により大内軍の安芸侵攻を知った尼子経久は、救援軍5,000を派遣。元就ら安芸国人衆もこれに加わり、大内軍と対峙しました。7月10日、尼子軍は先陣を撃破されましたが、元就は第3陣として控えていました。8月5日夜、元就の提案による夜襲が実行され、大内軍に大きな損害を与え、10日に大内軍は撤退しました。

戦後

安芸武田氏は佐東銀山城を守り抜きましたが、友田氏の桜尾城は大内氏に降伏しました。翌年には毛利氏が大内氏に寝返り、安芸の情勢は大内氏に有利となります。その後、大内義興・義隆の軍勢が佐東銀山城を包囲しますが、義興の病により撤退しました。

天文10年（1541年）の戦い

武田氏の衰退

毛利元就の台頭とは対照的に、安芸武田氏は衰退の一途を辿っていました。熊谷信直が離反し、武田光和が病没。若狭武田氏から養子に入った武田信実は家臣団の対立を解消できず、品川左京亮が香川光景の居城を攻撃したことで、家臣が次々と離反し、信実は出雲へ逃亡しました。

吉田郡山城の戦い

信実は、尼子詮久（後の尼子晴久）に安芸武田氏復興の支援を要請し、尼子軍は佐東銀山城に入城しました。尼子詮久は3万の大軍を率いて吉田郡山城を包囲しますが、毛利・大内軍の援軍により、尼子軍は決定的な敗北を喫し、出雲へ撤退しました。

落城

尼子軍の敗走を聞いた信実は出雲へ逃亡。佐東銀山城には武田信重が残され、毛利軍の攻撃を受け落城。信重は自害しました。元就は、火をつけた草鞋を川に流して敵を混乱させ、佐東銀山城を搦め手から攻略しました。これにより、銀山城は大内氏の支配下に入りました。

戦後

天文11年（1542年）に武田氏の旧臣である伴氏が挙兵しますが、敗北します。天文20年（1551年）に陶隆房が大内義隆を謀反（大寧寺の変）を起こすと、元就は陶氏と協調し佐東銀山城を攻略。その後、元就は再び大内（陶）方の佐東銀山城を落とし、毛利氏の支配下に置きました。

光和の庶子であった武田小三郎は毛利氏に従い、毛利氏の周防移封に伴い、周防武田氏の祖となりました。

まとめ

佐東銀山城の戦いは、安芸武田氏の滅亡と毛利氏の台頭を決定づけた重要な戦いです。大内氏、尼子氏、毛利氏という戦国大名が入り乱れ、それぞれの思惑と戦略がぶつかり合ったこの戦いは、戦国時代の動乱を如実に表していると言えるでしょう。特に、毛利元就の知略が際立った戦いであり、後世に大きな影響を与えました。

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