佐竹義文

佐竹義文（さたけ よしぶみ）は、江戸時代後期の武士であり、佐竹氏一門の佐竹北家第14代当主として知られています。彼は、佐竹北家が領有する角館の第7代所預（ところあずかり）も務めました。

生涯

義文は、明和7年（1770年）に佐竹義躬の長男として誕生しました。寛政元年（1789年）に元服し、武士としての第一歩を踏み出します。寛政11年（1799年）には、父の隠居に伴い家督を相続し、角館城代となりました。これは、角館の領主としての責務を担うことを意味します。

文政3年（1820年）には、秋田藩の執政として久保田城に常駐し、藩政にも深く関わるようになります。しかし、文政5年（1822年）には執政を辞職し、角館に戻っています。

義文は、領内の産品振興にも熱心でした。文化2年（1805年）には、角館の名産である「国鱒塩引き」を秋田の佐竹宗家へ献上輸送した記録が残っており、特産品を積極的に活用していたことがわかります。

また、彼は文化人としての側面も持ち合わせていました。領内名産の樺細工を自身も嗜み、文化2年（1805年）には、新田藩主の佐竹義知に自作の樺細工の印箱を所望され進呈しています。さらに、文化12年（1815年）には津軽藩主津軽寧親に印籠を贈りました。その返礼として、寧親からはインド産の珊瑚文様の革が贈られています。これらのエピソードから、義文が芸術への造詣が深く、他の藩主との交流も大切にしていたことが伺えます。

文政5年（1822年）には、参勤交代の際の道中紀行文『千賀之紀行』と、自ら収集した植物の押し花集である『花葉集』を著しました。これらの著作から、義文が旅や自然への関心も高かったことがわかります。

文政8年（1825年）に隠居し、家督を嫡男の義術に譲りました。同年死去し、享年56歳でした。

参考文献

* 林正崇『図説・角館城下町の歴史』無明舎出版、1982年

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