佐野常羽

佐野常羽（さの つねは）

佐野常羽（1871年8月18日 - 1956年1月25日）は、日本の海軍軍人であり、海軍少将、伯爵の爵位を持つ人物でした。彼は日本のボーイスカウト運動において、指導者の訓練体系を確立したことで知られています。また、日本赤十字社の創始者である佐野常民の子でもあります。

経歴

佐野常羽は海軍兵学校に入学し、1891年（明治24年）に卒業（18期）。日清戦争では浪速分隊士として従軍しました。1900年（明治33年）2月には清国南部出張を命じられ、北清事変には和泉分隊長として参戦しています。1902年（明治35年）12月26日には家督を継ぎ、伯爵となりました。

東郷平八郎のもとで砲術長を務めた後、海軍高等通訳官、ドイツ大使館付武官、戦艦榛名の艦長などを歴任しました。ドイツ大使館付武官時代には、しばしばロンドンに滞在し、本場のボーイスカウト運動を見聞しました。

1922年（大正11年）に退役後、栃木県佐野に「唐沢義勇少年団」を結成。1924年（大正13年）には第2回世界ジャンボリーに参加（団長は三島通陽）し、その後ボーイスカウト国際会議に日本代表として参加しました。ギルウェル指導者訓練所（ギルウェル・パーク）に日本人として初めて入所し、1925年（大正14年）には富士山麓山中湖畔大洞にて第1回指導者訓練所（のちの山中野営場、中央指導者実修所）を開設、所長に就任しました。これにより、日本のボーイスカウト運動における指導者の訓練体系が確立されました。1929年（昭和4年）には第3回世界ジャンボリー派遣団の団長として大会に参加。1931年（昭和6年）には、ロバート・ベーデン・パウエル卿より、ボーイスカウトイギリス連盟の最高功労章であるシルバー・ウルフ章を贈られました（日本人で本章を授与されたのは、昭和天皇と佐野の二人だけです）。1947年（昭和22年）11月28日、公職追放仮指定を受けました。

1954年（昭和29年）には、ボーイスカウト日本連盟から「長老」の称号を贈られ、1955年（昭和30年）には日本連盟の最高功労章である「きじ章」を贈られました。1956年（昭和31年）1月25日に死去。享年86歳でした。

ボーイスカウト日本連盟所属の山中野営場（山梨県南都留郡山中湖村）の玄関には佐野の胸像が置かれており、山中野営場には彼の名をとった「佐野広場」があり、記念碑（道心堅固の碑）が建てられています。

親族

妻は保科正益の次女・尚子。養子の佐野常光（1906年生）は一条実輝公爵の次男で旧名・実光。その妻佐野禮子は竹田宮恒久王の第1王女。
養孫には
常行(1935年2月10日生、三女あり)
常武(1942年5月9日生、)
常倶(1946年12月29日生、)
がいます。

栄典

位階
1906年（明治39年）12月27日 - 従四位
1928年（昭和3年）1月16日 - 正三位
勲章等
1913年（大正2年）5月31日 - 勲三等瑞宝章

弥栄

「弥栄」は「いやさか」と読み、ボーイスカウト日本連盟、およびギルウェル指導者訓練所の祝声です。

世界各国のスカウトは自国語の祝声を持ち、日本連盟は古語である「弥栄」を採用していました。1924年（大正13年）、ギルウェル指導者訓練所の所長であったJ・S・ウィルソンから、その時入所していた13ヶ国の指導者全員に、各国のスカウト祝声を披露するようにとの命令がありました。

このとき佐野は、「弥栄」を披露し、「ますます栄える（More Glorious）」という意味であることを説明したところ、ウィルソン所長は、「発声は日本のものが一番よい。そのうえ哲学が入っているのが良い」と賞賛し、以後、ギルウェル訓練所の祝声を「弥栄」とすることに定めました。

清規三事

佐野常羽の残した教えのひとつに「清規三事」があります。（読みは「しんきさんじ」、「ちんぎさんじ」、「せいきさんじ」など諸説あります。）それぞれの英訳も佐野が行ったものです。

1. 実践躬行 （じっせんきゅうこう、Activity First）
スカウト運動（スカウティング）は、自ら実行することが第一である。
2. 精究教理 （せいきゅうきょうり、Evaluation Follows）
物事の実行には、その価値を評価し、反省し、そして理論を探求することが必要である。
3. 道心堅固 （どうしんけんこ、Eternal Spirit）
実行・評価・反省を繰り返して「さとり」をひらき、永遠に滅びることのない心境を開くよう努力すべきである。

著書

『少年斥候法　四の巻』（少年団日本聯盟、昭和4年）

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