保科正益

保科正益：幕末の動乱期を生き抜いた藩主と幕臣

保科正益は、上総国飯野藩の第10代にして最後の藩主です。幕末期には若年寄という要職に就き、激動の時代を駆け抜けた生涯を送りました。

生い立ちと藩主就任

天保4年（1833年）、第9代藩主・保科正丕の三男として江戸で誕生しました。幼少期は病弱だったため、しばらくの間は正式に届け出られませんでした。しかし、兄たちが夭折したため、後に届け出られ、弘化4年（1847年）には世子に定められます。嘉永元年（1848年）、父の死去に伴い、家督を継いで飯野藩主となりました。

幕臣としての活動

藩主の職務に加え、幕府においても重要な役割を果たしました。大坂加番や日光祭礼奉行などを歴任し、嘉永6年（1853年）のペリー来航時には、浦賀の警備にあたっています。これは、アメリカ合衆国による開国要求という歴史的出来事への関与を意味しており、正益の幕府における重要性を示す出来事でした。文久3年（1863年）には大坂定番に任じられ、慶応2年（1866年）5月には若年寄に昇進。同年からの第2次長州征伐では石州口の幕府軍を指揮しました。慶応3年（1867年）1月には江戸に帰り、7月には若年寄を辞任しています。

戊辰戦争とその後

慶応4年（1868年）の戊辰戦争では、新政府に恭順し、前将軍・徳川慶喜の助命を願い出て入京を試みました。しかし、親戚にあたる会津藩主・松平容保が徹底抗戦の姿勢を示したため、連座により京都北野で謹慎を余儀なくされます。その後、幕府側に与した家臣を処刑したことで、6月19日に罪を許されました。

明治維新後と晩年

明治2年（1869年）6月の版籍奉還により飯野藩知事に任じられましたが、明治4年（1871年）7月の廃藩置県で免職となりました。1884年7月8日には子爵に叙爵され、華族としての地位を得ています。明治21年（1888年）1月22日、享年56歳で生涯を閉じました。

家族と姻族

正益の妻は伊達宗紀の七女・伊達節子です。子女には、保科寧子、保科尚子、保科建子、楠田咸次郎、保科正昭がいます。特に、娘たちの婚姻相手は、岩崎久弥、佐野常羽、沢田鋓義といった名家の人物で、その姻族関係は、三菱財閥など、日本の近代化に大きく貢献した家系と繋がっています。正益の長女・寧子の長女は、エリザベス・サンダースホームの創立者・沢田美喜であり、次男・咸次郎の次女は元三菱銀行頭取の田実渉と結婚しています。また、蔦屋の養女は元三菱重工業社長の牧田與一郎と結婚し、その四男は民族主義者の牧田吉明です。

歴史における位置づけ

保科正益は、幕末から明治維新という激動の時代を生き抜き、藩主、幕臣として重要な役割を果たしました。彼の生涯は、単なる藩主の物語を超え、日本の近代化への移行期における、複雑で重要な側面を映し出しています。その家族や姻族関係から見える広範なネットワークも、日本の近代史を理解する上で重要な要素と言えるでしょう。彼の功績と生き様は、現代においても再評価されるべき歴史的事実です。

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